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効果的なプロモーション戦略の設計・前半

 

顧客とのコミュニケーションの難しさは、受信者がメッセージを発信者の意図したとおりに解釈しない「エンコーディングとデコーディングの不一致」という現象によって説明できます。

 

顧客と効果的にコミュニケーションをとるためには、闇雲にメッセージを発信するのではなく、メッセージを発信するまでのプロセス一つひとつを計画的に設計しなければなりません。

 

プロモーションを効果的に行うための戦略は、次の8ステップによって設計されます。

 

 1.ターゲットの明確化
 2.目的の決定
 3.コミュニケーション設計
 4.コミュニケーション・チャネルの選択
 5.予算の設定
 6.コミュニケーション・ミックスの決定
 7.効果測定、モニタリング
 8.統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)の管理

 

 

以下に各ステップを一つひとつ詳しく説明します。

 

1.ターゲットの明確化
まずは、コミュニケーションの標的となる視聴者を明確にし、標的視聴者が製品・ブランドに持つイメージを把握する必要があります。

 

「誰に」向けてメッセージを発信するのかを明確にすることから始めなければ、どのようなメッセージを発信すればいいのか決定できません。

 

ターゲットが異なれば、ターゲットに響くメッセージも異なるからです。

 

さて、ターゲットなのですが、こちらは基本的にSTPで決定した標的セグメントの消費者を指します。

 

ただし、標的視聴者は標的となるセグメント内の消費者から、さらに絞り込みます。

 

「ターゲティングで定めたセグメントなら、もう十分に絞り込めているのでは?」と思われませんか? 実際には、もっと絞りこまなければ不十分なんです。

 

なぜなら、セグメント内の消費者にもさまざまな属性があるからです。

 

ユーザにもヘビーユーザかライトユーザか、あるいはそもそもユーザでないかに分けられます。

 

消費者が製品やブランドを知っているか知っていないか。

 

消費者一人ひとり異なる状況にあるにも関わらず、たった1つのメッセージで全員に同じような効果をもたらすような、都合のいいメッセージはありません。

 

そのため、セグメント内の消費者から標的視聴者を決定することから始めるのです。

 

また、標的視聴者を決定したら、標的視聴者が今どのような状況にあるかを把握する必要があります。

 

X県の消費者は自社製品に好ましくないイメージを持っている、Y県の消費者は非常に好ましいイメージを持っている、Z県では全く知られていないとします。

 

X、Y、Zの3県は、自社の標的セグメント市場でありますが、地域ごとにそれぞれ異なる状況にあります。

 

すると、これらの3つの県では異なるコミュニケーションを必要とします。

 

X県では製品イメージを改善するためのコミュニケーション、Y県では製品の良好なイメージを維持するためのコミュニケーション、Z県では製品認知を高めるといった具合です。

 

したがって、標的視聴者の状況もまた明確にする必要があります。。

 

標的視聴者の状況を把握するには、標的視聴者の持つ製品・ブランドに対する次の3つの軸について調査すると良いです。

 

 ・認知度
 ・好感度
 ・イメージ

 

2.目的の決定
プロモーションの目的は1つだけではありません。もちろん、どの目的も最終的には利益に繋がることを目的としています。

 

どの企業も顧客に製品を購入してもらいたいと考えてはいるものの、製品の存在を知らない人にいきなり製品の良さをアピールしたところで、買うどころか相手にもされません。

 

AIDMAモデル』や『コミュニケーション・プロセス・モデル』でもお話したように、消費者には購買に至るまでにいくつかの認知段階があります。

 

標的視聴者の認知段階に応じて、目的を決定しましょう。

 

なお、認知段階を確認する際、採用するモデルは「AIDMA」や、「認知、情動、行動」などありますが、方針に応じて自由に決定して問題ありません。

 

3.コミュニケーション設計
この段階に至って、ようやく「何を、誰が、どのように」メッセージを発信するかを具体的に決定します。

 

「何を」はメッセージ戦略を意味し、メッセージの内容を決定します。

 

メッセージを発信する目的とそれに合致する視聴者の背景に応じた内容を決めなければなりません。

 

メッセージ内容は主に次のようなポイントが含まれています。

 

 ・アピール
 ・テーマ
 ・アイデア

 

必ずこれらが戦略策定時に決定したポジショニングに結びつくような連想をさせることに注意しましょう。

 

メッセージを受け取って、連想されたものがブランドのイメージに繋がるため、そのメッセージで何が連想されるかは重要です。

 

続いて、「誰が」すなわち、メッセージの発信源についてです。

 

基本的には自社以外の発信源を使いませんが、ときには有名無名の人物を通してメッセージを発信することもあります。

 

要するに、タレントをスポークスマンとして起用することです。

 

この場合は起用するタレントの好感度や専門性、信頼性などが重視されます。

 

コミュニケーション設計、最後の要素「どのように」はクリエイティブ戦略を意味します。

 

コミュニケーション効果はメッセージ内容とメッセージ表現によって決まります。

 

効果が表れない場合、表現は良いが内容は適切でなかったか、その逆かということになります。

 

内容はメッセージ戦略で決定するため、クリエイティブ戦略では表現を決定します。

 

クリエイティブ戦略におけるアピール法は、製品のベネフィットを述べる「情報型」と、製品のイメージを述べる「変容型」に分けられます。

 

情報型では、製品のベネフィットについて詳しく述べます。

 

例えば、製品がどんな問題を解決するか解決法の提示、製品はどんな状況で使えるかデモンストレーション、競合との品質の比較などがあります。

 

情報型では消費者が理性的に購買すると仮定して、理性的、論理的にに製品の良さをアピールします。

 

変容型では、製品のイメージについて詳しく述べます。

 

消費者の感情を刺激することで、イメージを植えつけたり、説得します。

 

この際、用いるのは恐怖心や罪悪感、羞恥心などに訴えると効果的です。ただし、強すぎると反感をくらうため、加減が大事です。

 

4.コミュニケーション・チャネルの選択
コミュニケーションの設計後は、メッセージを伝達する最も効率の良い経路、すなわちコミュニケーション・チャネルの選択です。

 

コミュニケーション・チャネルには人的と非人的の2種類があり、詳細は『情報の伝達経路』を御覧ください。

 

人的コミュニケーションと非人的コミュニケーションのどちらがより効果的かは一概には言えません。

 

人的コミュニケーションには、相手と直接触れ合える特性から、人的コミュニケーションの方が効果がある場合が多いです。

 

しかし、非人的コミュニケーション、特にマス・コミュニケーションが人的コミュニケーションの入り口となることもあります。

 

コミュニケーションはマスメディアからオピニオン・リーダーへ、オピニオン・リーダーからメディアに疎い大衆へと流れます。

 

このように非人的コミュニケーションから人的コミュニケーションへと流れるため、2つのチャネルは互いに影響し合って効果を及ぼします。

 

そのため、どちらか一方を選択するのではなく、チャネルを統合して活用することが効果的な選択です。

 

 

続きの5番目以降のプロセスは『効果的なプロモーション戦略の設計・後半』で解説します。


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