サービスマーケティングの基礎|サービスの性質1(無形性、非均一性)
サービスの5つの性質
サービス産業はアメリカでは2014年にはGDPの8割に当たり、日本ではまだそれほどの割合ではないにせよ多くを占めます。
先進国ほどサービス産業の重要度は高く(製造業からサービス業への移行)、日本はもちろん、国際市場でもサービスの重要度は高く、またこれからも高まることが想像できます。
サービスの重要性が増しているため、サービスの性質について学び、これからの産業の変化にいち早く対応できるように備えていきましょう。
さて、サービスとは製品を物理的特性に分けたとき、無形財にあたる財です(有形財と無形財併せて「製品」と呼ぶ場合もありますが、ここでは、無形財をサービスとします)。
サービスは無形性を持ち、無形であるゆえに有形の財とは異なる性質が多々あります。
ここでは、サービスの有形財とは異なる性質を紹介します。
サービスの主だった性質は5つあり、それぞれ、無形性、非均一性、不可分性、消滅性、需要変動性です。
それぞれの性質について、以下より解説します。
なお、本項では、無形成と非均一性について、続く不可分性、消滅性、需要変動性については次項『サービスマーケティングの基礎|サービスの性質2(不可分性、消滅性、需要変動性)』をご確認ください。
無形性(非有形性)
無形財の第一の特徴と言えば、この無形性です。無形財というように、サービスには形が無いという性質があります。
有形財ではないということから非有形性とも呼びます。
購入前に、サービスを物や実体として確認することができません。
実際に、見たり、触れたり、嗅いだり、味わったり、聞いたりと五感で「サービス」という財の本質を感じ取ることはできません。
物体を取り出して、「これが我が社の製品です!」とアピールすることができないため、サービスの特長を顧客に伝えることは有形財と比べて困難です。
有形財で例えば自動車の場合、製品の仕様が数字で表されたり、外装内装のデザインなど、確かめ比較できる要素はあります。
しかし、無形性を持つサービスでは、有形財ほど財の特長を表せるものがありません。
そこで、この無形性に対処する方法は、サービスの有形性を高めることです。
具体的にはサービスを可視化すると言います。
可視化とは、本来見えないサービスの品質を目に見える形で明らかにすることです。
例えば、過去のサービス提供例、導入事例を写真に納めて広告やウェブサイトで公開する方法です。
リフォーム業者や造園業者、清掃業者などはサービスの提供前後、すなわちビフォー&アフターを画像で見せることで、サービスを受けることでどんなベネフィットが得られるのかを明確にします。
消費者は曖昧なものを恐れます。「このサービスはどんなもの何だろう?」と思わせてしまっては購買に至りません。
有形財と異なり、実体がないため購買を躊躇より躊躇するのです。
そのため、「私達はリフォーム業者です」と訴えるより、「私達のリフォームでこのようなことが可能です」と導入事例を見せることでサービスを可視化し、消費者の不安の解消に一役買います。
美容師ならば、「ここは美容院である」ということを訴求するのではなく、「この美容院に通うことでこのように美しくなれます」とサービスを可視化します。
サービス内容を具体的に、ビジュアルで見せることで無形性の問題を解消できます。
非均一性(品質の変動制)
サービスは、誰が提供するか、いつ提供するかによって品質が異なります。常に同じ品質で提供し続けることが困難な性質をサービスの非均一性といいます。
例えば、遊園地は天候によっては稼働できないアトラクションが在ります。
美容院では美容師によって腕の良し悪しがあります。さらに、同じ美容師でもその日のコンディションによって全く同じパフォーマンスを発揮することはできません。
スポーツなら、ひいきの選手やチームが活躍できない試合かもしれません。応援するチームの勝利を期待しても必ずしも結果は期待通りにはいきませんが、支払う観戦料金は試合内容にかかわらず同一です。
このようにサービスは有形財と異なり、確実に同じ品質のサービスを享受できるか不確かです。この不確実性が消費者にとってはリスクになります。
非均一性への対応は、常に一定の品質を保てるよう管理することによって対処します。
具体的には、マニュアルの整備や教育の徹底、業務の定型化、機械への移行などです。
マニュアルや訓練によって、人による品質の非均一をコントロールし、一部の業務は機械化することでヒューマンエラーやサービスの品質の変動を無くすことが可能です。
銀行のATMの導入は人による計算ミスを無くし、迅速な預金の出し入れが可能になりました。
続きは、『サービスマーケティングの基礎|サービスの性質2(不可分性、消滅性、需要変動性)』で解説します。