マーケターの思索〜使えるマーケティング情報サイト〜

 

サービスマーケティングの基礎|サービスの性質2(不可分性、消滅性、需要変動性)

 

サービスの性質について続きです。

 

不可分性

不可分性とは、サービスを提供する側と提供される側が同時にいなければならない、生産と消費が同時になされ、切り離せないという性質です。

 

石鹸(有形財)は工場で前もって生産し、小売店で取引し、自宅で消費します。

 

対してサービスは、例えば学習塾であるなら、受講者と講師は同時にいなければなりません。

 

講師なしでは授業にはなりませんし、消費者の受講者がいなければサービスの受け渡しは不可能です。

 

美容師のサービスで、カットするなら、カット用の製品が渡され好きなときにカットしてくれるわけはなく、美容師と顧客が揃ってはじめてカットサービスの消費がなされます。

 

サービスは、提供者と享受者の相互関係が重要です。互いに信頼することでスムーズに、品質の高いサービスの受け渡しが可能になります。

 

そのため、企業は、消費者への印象を好くするよう努めます。

 

弁護士や会計士の事務所がみすぼらしかったら、(サービスの本質に関係はないが)クライアントは不安を拭えません。そのため、綺麗なオフィスと調度品を用意してクライアントをもてなします。

 

また、サービスの不可分性は距離的な問題と人員的な問題を発生させます。

 

学習塾ならわざわざ遠方まで通わないでしょう。どれほど評判が良い塾でも、通えない距離にあるなら選択肢から外れます。

 

また、提供者一人が顧客一人ひとりに対応することは非効率です。マンツーマンで高い品質で提供する方針なら話は別ですが。

 

これらの問題を解決する方法は、一度に複数の消費者に対応する仕組みを作る、あるいはサービスを記録・保存することによって対応できます。

 

学習塾では、一度に受講する生徒数を増員する。コンサルティングは個別からグループに移行するなどによって一度に対応する消費者の人数を増やせます。

 

また、学習塾の場合、授業を録画することで、遠方の同じ系列の塾にも同様の授業を提供することが可能です。東進ハイスクールはこの方法で、人気講師の授業をどの地域でも提供することが可能です。

 

授業の録画は不可分性と同時に、サービスの均質化による非均一性、と後に解説する非貯蔵性を解決しています。

 

士業なら、例えば税理士は節税のコツを本や教材にまとめて販売したり、セミナーで大勢の顧客を同時に対応することで不可分性の問題を解決できます。

 

セミナーを録画し販売すれば、遠方の消費者にも対応可能です。コンサルタントも同様にセミナーの録画等で対応が可能です。

 

消滅性(非貯蔵性)

サービスは生産と消費を同時に行うため、貯蔵ができず、在庫が持てません。この性質をサービスの消滅性と言います。

 

家電製品は製造過多だとしても在庫として貯蔵できます。そのため、必要なとき(需要が発生したとき)にすぐに販売する事が可能です。

 

しかし、ライブのチケットの売れ残り、宿泊施設の空き部屋は翌日に販売することができません。つまり、貯蔵が不可能です。

 

在庫を持たないことはサービスの利点であると同時に、貯蔵ができないというデメリットにもなります。

 

サービスは需要、供給の管理を有形財と異なるアプローチで取る必要があります。

 

消滅性への対応、受給管理については次の需要変動性で説明します。

 

需要変動性

サービスの需要量は季節、月、週、さらには一日の時間帯で異なります。この性質を需要変動性といいます。

 

一日の間では、例えば、飲食店はランチタイムや夕飯時に混雑します。飲食店でも居酒屋の場合はもっと遅い時間帯が混雑のピークになります。

 

また、鉄道やバスなどの公共交通機関は朝の通勤時間帯と、夕方頃の退社時間帯、いわゆるラッシュアワーが利用者数のピークです。

 

このように、サービスは一日の時間ごとでも需要が大きく変わります。

 

週で言えば、土日はスーパーやショッピングモールのような大型小売店は家族連れの買い物客で混雑しています。

 

季節で言うと、スキー場は冬の需要がピーク(そもそも夏は開業できません)ですし、映画はゴールデンウィークが稼ぎ時です。

 

サービスの消滅性、及び需要変動性への対処は受給管理によって行われます。

 

1.需要管理の場合

需要管理は基本的に、ピーク時の需要と非ピーク時の需要との落差を均すことを目的としています。

 

具体的には、非ピーク時の割引による需要喚起です。

 

例えば、夜間料金の割引、平日割引など、非ピーク時の料金を下げることで来店を促します。

 

ファストフードのマクドナルドは朝マックという朝専用メニューを用意し、非ピーク時の朝の来店を喚起しています。

 

他にも、予約システムを導入し、ピーク時の需要を他の時間にずらすことで対策できます。

 

2.供給管理の場合

供給管理では、需要の変動に対応するための供給量の管理を目的としています。

 

例えば、ピーク時にパート社員を雇用し供給量を増やし、需要のピークに対応します。

 

他にも、電車は午前7時から8時のラッシュ時の電車の本数と正午辺りの時間帯の本数とは大きく異なります。これは、需要の時間変動に対応して供給量を変化させています。

 

供給の効率を高める、マニュアルを整備し、非定型業務の定型業務化で効率を高めることができます。

 

需要は変動を少なくするよう努め、供給は需要量の変動に対応できるよう柔軟性を持つか、効率を高めて供給力に余裕を持つかで対応することが基本です。

 

 

 

以上が、サービスの主な性質5種です。

 

ご覧のとおり、有形財とは大きく異なる性質を持っています。そのため、マーケティング上の対応も大きく異なります。

 

マーケターはサービスの特異性に着目してマーケティングを進めることが求められます。


トップページ はじめに お問い合わせ ブログ