古典的な段階的チャネル以外のチャネル
『チャネルの段階数――生産者から消費者までの距離』では、古典的なゼロ段階から3段階までの段階的チャネルについてお話しました。
しかし、今日ではこの段階的チャネルの概念に当てはまらないチャネル形態も存在します。
本項では、段階的チャネル以外の形態をとったチャネルの代表例を紹介します。
フランチャイズ方式
フランチャイズ(franchise)とは免許や権利といった意味を持ち、転じて販売権を意味する言葉として用いられます。
ファストフードやレストランのような飲食店、コンビニエンスストア、カーディーラーなどがとるチャネル形態です。
フランチャイズ方式は、フランチャイザー(franchiser)とフランチャイジー(franchisee)の間で契約が交わされます。
フランチャイザーはビジネスシステムの提供者、フランチャイジーはビジネスシステムを得て事業化する業者です。フランチャイザーとフランチャイジーの関係は本部と加盟店の関係にあります。
フランチャイズには次のような特徴があります。
1.フランチャイザーはフランチャイジーに対し、商標、商号、ブランドのトレードマークの使用権を与え、対価として使用料(ロイヤリティ)を受け取ります。
2.フランチャイジーはフランチャイザーのビジネスシステムの加盟権利を得る代わりに、加盟料を支払います。
フランチャイジーは創業時に設備、備品のレンタル料を支払い、定期的にラインセンス料を支払います。さらに、月々売上高(あるいは粗利益)の一部も支払います。
3.フランチャイザーはフランチャイジーにビジネスシステムを提供します。このシステムにはビジネスの構築からオペレーションまで、事業を営むのに必要なノウハウ全てが詰まっています。
要約すると、フランチャイズ方式とはビジネスのノウハウをパッケージングして販売する方式です。
フランチャイザーは多額の資本を投資せず他社の資本及び労力を活かして事業を拡大でき、フランチャイジーは既に知名度のあるブランドを使ったビジネスの運営ができるという双方メリットがあります。
フランチャイジーは自社が運営する「雇われた労働力」ではなく、起業家として店舗を運営するため、熱心な働きが見込めます。
したがって本部に資金がなくても、短時間で事業拡大が図れるチャネル形態です。
なお、フランチャイズ方式を採用していても、全ての店舗をフランチャイジーに任せっきりにするのではなく自社直営の店舗と組み合わせることが多いです。
顧客からすると直営店かフランチャイズ店かの判別ができません。
そのため、直営店で質の高いサービスが提供できても、サービスの質が低いフランチャイズ店を利用してしまった顧客は、そのブランドに失望感を持ってしまいます。
他の店舗の低評価がブランド全体に波及してしまう可能性があるため、フランチャイズ店のサービスの質を管理することは非常に重要です。
マルチレベル方式
マルチレベル方式は連鎖販売取引といい、アメリカで発達したビジネスです。日本ではアメリカほど普及していませんが、消耗品・日用品を取り扱うアムウェイが有名です。
製品の流通には流通業者を介さず、消費者間のネットワークを活用する独特なシステムです。このため、マルチレベル方式を採用したビジネスはネットワーク・ビジネスと呼ばれます。
システムの中核メンバーをディストリビューターといい、ディストリビューターは傘下の会員を集めます。
会員は製品を購入することも販売することも可能で、店舗を持つ必要なく販売事業を行えます。会員は自らの人脈(親戚や友人など)を用いて販売あるいは会員への勧誘を行います。
ディストリビューターは傘下の会員の販売量に応じてマージンを得ます。そのため、会員の販売活動が上手くいくように、ディストリビューターは積極的に会員をサポートします。
会員数が増えるほど、会員の販売量が増えるほどビジネスが大きくなる仕組みです。
以上のシステムが全て、消費者のネットワーク内で行われます。
マルチレベル方式の大きなメリットは、初期投資が少額で済むことです。
販売活動はネットワークで行われるため、製品さえあればすぐに事業を起こせます(取引が成立してから製品を製造しても良いため、製品の現物は最悪なくてもいい)。
ただし、マルチ詐欺やねずみ講と勘違いされないように、ディストリビューターは会員を厳正に管理しなければなりません。
ライセンス方式
ライセンス方式とは、自社のブランドやキャラクターを他社に貸し出すビジネス方式です。
ライセンス方式は他社の製品に自社のキャラクターを付与させて販売することを認めるビジネスです。
映画や漫画・アニメ・ゲームのようなエンタテインメント業界のキャラクター使用権、企業ブランドの使用権、スポーツ選手の個人ライセンス供与などがライセンス方式になります。
フランチャイズ方式におけるフランチャイザーとフランチャイジーのように、使用権を与える者をライセンサー、使用権を得る者をライセンシーといいます。
他のチャネル方式同様、イメージを損ねる販売方法をとるライセンシーを出さないよう無闇にライセンシーを増やさず、ライセンシーの管理が重要になります。