「平均」にも色々ある
平均の種類
「平均」とは実は一つだけじゃないんです。そもそも平均が複数あること自体ご存知なかった方もいらっしゃるかと思います。
「平均」というと、あなたは何を思い浮かべますか?
平均身長、平均体重、平均年収などなど「平均」が先頭に付く統計情報かもしれませんし、
という平均の算術式かもしれません。ちなみに、上の数式は数値の総和を数値の個数で割ることを意味します。
一般に平均というと上の数式で算出されます。この平均は、数ある平均の内の一つです。
本項ではさまざまな種類の平均を紹介します。
1.算術平均(相加平均)
初めに紹介した、上の数式で求められる平均が算術平均です。
算術平均の求め方は、数値を全て合計し、合計した数値の個数で割ることで算出できます。
単に平均というと一般に算術平均を表します。基本的に、他の平均と区別するときのみに算術平均や相加平均と呼びます。
2.幾何平均(相乗平均)
幾何平均は成長率や利子率などの、算術平均では正しく算出できない平均値を算出するのに適しています。
幾何平均は以下のように計算できます。
ある数値がn個ある場合、全ての数値を掛け合わせて、n乗根をとった値が幾何平均です。
上の式だけ見ても直観的にわからないと思います。
そのため、個数の少ないデータで計算の具体例を以下に出します。
ある値AとBの幾何平均と、ある値A,B,Cの幾何平均を計算するとき、以下のように計算できます。
では、具体的に数字を使って算出してみましょう。
ある年の利益が100万円だとし、次期以降120、150、200と成長したとします。
各期の成長率は20%、25%、33.3%と計算できます。
このときの幾何平均は、各期は1.2倍、1.2倍1.333倍と増えており、この3つの値で幾何平均をとります。
計算するには、3つの値を掛け合わせて3乗根をとります。
すると、1.26倍となり、年平均26%で成長していることになります。
3.調和平均
調和平均は以下のように定義されます。
算術平均のデータを逆数にして計算したものです。
ある値AとBの調和平均、ある値A,B,Cの調和平均は以下のように計算されます。
具体例として平均時速の計算に用いられます。
例えば、「行きは8km/h、帰りは12km/hで往復した。このときの平均時速は?」という問題があったとします。
この問題で算術平均を取ろうとすると、8と12の平均は10ですが、実際の平均時速は10km/hではありません。
調和平均で計算すると9.6km/hとなり、こちらが正解となります。
何で調和平均が正しいのか、実際に具体的な移動距離と移動時間を当てはめて計算してみると分かりやすくなります。
距離12kmの経路を往復したとします(距離は何でもよく、L[km]でも計算できます)。
このとき、行きは1.5時間、帰りは1時間かかります。すなわち「(往復)距離24kmを2.5時間で移動したときの時速は?」という問題に置き換えられます。
ここまで来れば小学生の簡単な問題になりますね。答えはやはり、調和平均で出した9.6km/hとなります。
4.トリム平均(調整平均)
トリム(trim)とは「切り取る」ことを意味します。
データの最小値付近、あるいは最大値付近が異様に偏っていたり、異常値が発生した場合に用います。
データの両端(最小付近、及び最大付近)を切り取る、すなわち計算から除外して平均を算出する方法です。
これらの平均の使いどころはともかく、平均の計算にはさまざまあることを念頭に置いておいてください。
ちなみに、それぞれの平均の関係は、
相加平均≧相乗平均≧調和平均
となっております。
演習問題
問1.ある企業の利益が120万円、140万円、180万円と推移しているとき。幾何平均を用いて、平均成長率を求めなさい。
問2.ある距離を行きが10km/h、帰りが20km/hで移動した。このときの平均時速を答えなさい。
問3.以下のデータについて次の問いに答えなさい。(小数は第一位を四捨五入)
111,124,164
(1)算術平均を答えよ。
(2)幾何平均を答えよ。
(3)調和平均を答えよ。
解答
問1.22.5%
問題の情報を表にまとめると以下のようになる。
期間 | 利益(万円) | 成長率(%) |
第一期 | 120 | |
第二期 | 140 | 16.7 |
第三期 | 180 | 28.6 |
成長率より、1.167と1.286の幾何平均を取る。
定義式に代入すると、1.225。よって、平均成長率は22.5%。つまり、毎年22.5%ずつ利益を伸ばしていることになる。
問2.13km/h
10km/hと20km/hを調和平均の定義式に代入する。
問3.全て定義式に代入することで求められる。
(1)133
(2)131
(3)129