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権威性の強さとその危うさ

 

権威に盲従することの危険性

権威性とは権威者の話は人を納得させるという心理的性質です。

 

この性質は、良くも悪くも強力な性質です。

 

ミルグラムの実験では、危険であることが明白にも関わらず、研究者の権威に従って教師役は生徒役に電流を流すということが明らかになりました。

 

教師役本人の道徳的価値観から外れた行為であっても、権威のもとに電流を流すことが正しいと判断してしまうのです。

 

権威者の命令は正しいか否かをあまり考えずに服従してしまうことが多いことがわかりました。

 

つまり権威への服従は機械的に行われ、考えることをしなくなってしまう危険性があります。

 

考えての行動ではなく、権威という刺激に対する反応といった方が近いかもしれません。

 

権威者の指示に従うことが必ずしも悪いことではありません。権威者は私達より知識を持っているでしょうし、正当な権利を持っての指示でしょうから。

 

身近な例では、上司からの指示や経営トップからの命令です。彼らに従うことが益になります。彼らが賞罰を決定する権限を持っており、知識や経験を積んでいるため、彼らの指示に従うことが正しい行動へのショートカットになります。

 

しかし、時として権威者の指示が間違っているときがあるのです。そのような時でも権威者の指示に盲目的に従ってしまう危険性が権威性には備わっているのです。

 

機長症候群――権威性が引き起こすリスク

機長症候群という現象から権威性には危うい面も備わっているという教訓があります。

 

優秀な人は、自身の判断が最も正しいと思ってしまう危険性があります。それと同時に、周囲からその人は優秀で判断も的確であると思われることも同じく危険性があります。

 

機長症候群とは権威ある人の判断に盲従してしまい、権威者のミスを権威者も含めて誰も正さない現象です。

 

飛行機(旅客機)は通常、機長と副操縦士、二人のパイロットによって操縦されています。

 

中でも機長は飛行機の乗員のリーダーで、飛行機の操縦に関しては確かな知識と経験を備え、正当な権限をもってリーダーを務めています。

 

飛行機の操縦では、リーダー(機長)の判断ミスを副操縦士をはじめとする周囲の人が誰もミスを指摘しなかったために引き起こった悲惨な事故がいくつも起こっています。

 

このようなミスは、機長の権威に盲従してしまったことが大きな要因です。

 

エア・フロリダ90便墜落事故という1982年の航空事故では、計器の異常を確認しながら機長は問題なしと判断し、それを誰も止めなかったために墜落してしまいました。

 

権威性の強い影響力により起きた凄惨な事故の一例です。

 

機長症候群は航空業界に限った話ではありません。

 

医師や看護師は医療の専門家でありますが、当然医師の方が医療従事者の中で地位が高いです。

 

看護師も相応の専門知識は持っているものの、医療現場では医師の指示に盲従してしまいます。

 

ここでも機長症候群が働き、医師の判断ミス、それも看護師でも通常ならミスと判るような判断ミスすらも盲目的に従ってしまうことがあるのです。

 

影響力の強すぎるリーダーは周囲を盲目にさせてしまい、リーダーの判断ミスを指摘しにくくさせてしまいます。

 

権威性に振り回されないための守り方

権威の影響力は強く、ときに私達を盲目にさせてしまうことがわかりました。

 

権威性は適切な行動を取らせる近道にもなれば、相手の判断力を奪ってしまう性質にもなります。

 

こうした権威性の危険からどうしたら身を守れるのでしょうか?

 

答えは意外にも簡単で、権威の力を察知することです。

 

つまり、相手が権威によって私達に影響を与えようとしていると気づいたり、服装や見た目、肩書きなどで簡単に権威を取り繕えると理解することで権威から身を守れるようになります。

 

なお、権威への抵抗法を知ったからといって闇雲に権威に抵抗しようとすることは賢くありません。

 

前述したとおり、権威者の判断や指示というのは彼らの専門的な見地から発されるため、たいていは有益な助言となります。

 

そのため従うべき権威者か否かを判別する必要があります。

 

ある問いかけをすることで、判別の役に立ちます。それは「本当に権威ある専門家なのか?」です。

 

この問いかけは権威者の専門性と、その問題と専門性との関連性に注目させてくれます。

 

権威と問題に関連性がない場合、その人はその問題の専門家ではない、すなわち関連性のない権威者であることがわかります。

 

例えば、医師は医療の専門家ではありますが、医療現場の外では本質的には権威を持っているわけではありません。

 

医療と無関係の問題に対して、医師から権威を感じる必要はないということです。


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