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ニーズ再考|ニーズの種類、消費者はニーズを自覚していない

 

「ニーズ」について

あなたは「ニーズ」という言葉を日本語で適切に説明できますか?

 

企業のサイトに掲載している企業情報や理念、代表のメッセージを拝見すると、

 

・顧客ニーズに対応した
・ニーズに的確にお応えし
・お客様のニーズを第一に

 

といった文言をしばしば見かけます。

 

ニーズという言葉が一般的に使われていることが反映されているのだと思います(そうはいっても聞き慣れない横文字を連発する企業サイトもしばしば見かけますが)。

 

それでは、この「ニーズ」という言葉にはどんな意味があるのでしょうか? どういうものがニーズなのか説明できますか?

 

企業理念として「お客様のニーズを第一に考えています」というのであれば、従業員がみなニーズに対して共通の認識を持っているはずです。というより、もっていなければならないでしょう。

 

ニーズは一般的に使われている一方で、意味が正確に理解されていない言葉、見解が一致しない言葉でもあると思います。

 

では、「ニーズ」という言葉を本項で掘り下げてみましょう。

 

ニーズとは「必要なモノを求める状態」です。現状に満たされていない、満たしたいという思いがニーズです。

 

似た言葉に「ウォンツ」があります。ウォンツは日本語で「欲求」意味します。

 

ニーズとウォンツの違いを具体例をあげて説明します。

 

例えば、仕事が行き詰まり気分をリフレッシュさせたいと思いたち、コーヒーを飲んだとします。

 

このとき、「コーヒーが飲みたい」という状態はウォンツにあたります。

 

よくある誤解で「コーヒーが飲みたい」がニーズであるとされてしまうことがありますが、具体的に欲しているものがわかっているのであれば、それはウォンツとなります。

 

では、ニーズは何かというと「仕事が行き詰まった状態」この満たされない状態がニーズです。

 

そして、コーヒーはリフレッシュという便益(ベネフィット)を提供します。

 

リフレッシュを目的としている消費者にとっては「コーヒー」が欲しいのではなく、「リフレッシュできるもの」としてコーヒーを購入したことになります。

 

製品が満たすニーズはもとより、ニーズという言葉自体を的確に把握していないと、「コーヒーが欲しいから買った」「コーヒーが美味しいから買った」という短絡的な分析が出かねません。

 

ニーズの種類――顕在ニーズと潜在ニーズ、機能的ニーズと情緒的ニーズ

ニーズを分解すると、意識下にあるニーズを潜在ニーズ、意識したニーズを顕在ニーズの2つに分けられます。

 

さらに顕在ニーズは基本的ニーズと副次的ニーズに分けられます。

 

基本的ニーズとは人間が生活するのに最低限満たすべきニーズです。例えば最低限度の衣食住、教育や保健、衛生環境、などがあります。満たされていないと満たしたいと強く望まれるニーズです。

 

副次的ニーズは基本的ニーズ以外のニーズで、より豊かになりたいといったニーズが含まれます。

 

ニーズはまた、求めているものの性質によって分解もできます。

 

機能的ニーズ情緒的ニーズの2種類です。

 

これらは具体例をあげて説明した方が理解しやすいと思います。

 

例えば、メルセデス・ベンツは自動車のブランドの1つです。

 

ベンツは自動車ですから移動手段という機能を持ち、速く移動できるというベネフィットを提供します。

 

製品の機能から得られるベネフィットで満たされるニーズが機能的ニーズです。

 

また同時に、ベンツは高級ステータスシンボルであるため、ステータスの高さに価値を置く消費者には、情緒面でもベネフィットを提供します。

 

このときに満たされるニーズが情緒的ニーズです。

 

最後に1つ留意点として、ニーズをneedsという言葉から直訳し、「必要に迫ったものを欲しがることである」という誤解をしないでください。

 

ニーズは必需品、ウォンツは嗜好品のような分類はされません。

 

ニーズという言葉は必需品のみに用いられる言葉では決してなく、情緒的な商品にも用いられる言葉です。

 

消費者はニーズを自覚していない

マーケティング・リサーチで「どんな製品が欲しいか?」調査を行ったとしても、新製品の企画に参考になるアイデアがそのまま消費者から得られることはまずありません。

 

こういうのが欲しい、ああいうのが欲しいというのは、参考となった現存する製品であることにほかありません。

 

消費者は既にあるモノの中からしか選べないから当然です。

 

一般的な消費者は技術的な背景も持たず、新製品開発のノウハウもないため「〇〇のニーズを満たす、??というコンセプトの製品を開発して欲しい」と具体的な回答は出せません。

 

100年前にマーケティング・リサーチを行って、携帯電話のような当時は影も形もない製品の着想を得ることはないでしょう。

 

今でこそiPhoneやiPadのような製品が欲しいと顧客は言えますが、100年前のようなこれらの製品が影も形もない時代に「今、あなたの求めているものは何ですか?」と顧客に聞いてみてもiPhoneの着想を得ることはできません。

 

潜在ニーズと顕在ニーズに分けられるように、消費者は漠然と満たされない状態を感じるものの全てが明確に表現できるものではありません。

 

企業は消費者の問題解決策を提供するとしながらも、消費者が何を満たされないと思っているのか、あるいは何を満たしたいと思っているのか理解していないため、なかなか実現できません。

 

他ならぬ消費者自身が自分のニーズを自覚していないため、企業側はなおさら消費者のニーズを探ることは困難であります。

 

マーケティングで成功するために、マーケターは消費者の潜在ニーズを掘り当てて明確にする必要があります。

 

そのためには、常に顧客と向き合いマーケティングは顧客のニーズから始まることを念頭に置きましょう。

 

消費者はニーズを自覚していないといっても、顧客と向き合う意味は無いと言っているわけではありません。

 

はっきりとした答えを顧客の口から得られませんが、マーケティングを成功させる糸口は顧客から得られるものです。


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