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一般的なイノベーション|既存市場内から探り当てる方法

 

イノベーションとは

イノベーションの方法についてお話する前に、そもそもイノベーションとは何かを明らかにします。

 

イノベーションはビジネスにおいて非常によく用いられる言葉で、基本的に“新しいもの”に対して用いられる言葉です。

 

イノベーション(innovation)を直訳すると「革新」や「新機軸」であるため“新しい”というのはおおよそ当たっています。

 

常に新たな価値を創造し、成長し続ける企業にとってイノベーションの創出というのは常に課題としてついて回ります。

 

“新しいもの”を生み出さなければ、目まぐるしく変化する現代の競争環境に追いつけないため、イノベーションの創出は急務であるといえます。

 

そこで再び疑問が浮かび上がります。「どういうものがイノベーションなのだろうか?」という疑問はまだ明らかになっていません。

 

イノベーションを検索すると「技術革新」と訳されている場合もあります。

 

また、先端技術を用いた産業、高度な技術産業における技術革新=イノベーションとしている場合もあります。

 

ゆえに、最先端の技術を有している企業でしかイノベーションは成し得ないのではないかと思わせてしまうことさえあります。

 

しかし、イノベーションは何も新技術による技術革新のみを指す言葉ではありません。

 

実際には、直訳した言葉どおり「新しいこと」がイノベーションであると言えます。

 

経済学者J.A. シュンペーターはイノベーションを「新結合」としており、シュンペーターは新結合には次の5つがあるとしています。

 

 1.新しい生産物または生産物の新しい品質の創出と実現
 2.新しい生産方法の導入
 3.産業の新しい組織の創出
 4.新しい販売市場の開拓
 5.新しい買い付け先の開拓

 

これを見ると、イノベーションは広い範囲で使われ、技術革新というのは1および2にあてはまり、イノベーションの一部に過ぎないことがわかります。

 

既存市場内から生まれるイノベーション

さて、本題の既存市場内からのイノベーションについてです。

 

今回お話する内容は、製品のイノベーションについてです。

 

製品のイノベーション、すなわち新製品の開発では既存の製品分野の枠内で行われるものと、全く新しい製品分野を生み出すものの2種類あります。

 

このうち既存の製品分野の枠内で行われるイノベーションを一般的なイノベーションとします。

 

既存の枠組みで行われるイノベーションは、現在展開している製品を起点にアイデアを発想します。

 

そのため、新たな市場を生み出したり既存市場を拡大するというよりは、ターゲットとなる市場を拡大する効果を及ぼします。

 

一般的なイノベーションの方法は以下のようなものがあります。

 

1.改変
改変とは既存製品の特性を増やす、あるいは減らすことです。

 

清涼飲料水であれば、果汁を増やしたり、栄養素を増やしたりします。

 

銀行は支店を増やし、さまざまな場所でサービスを提供できるようにします。

 

配送業者は配達時間を縮める、あるいは素早い配達プランを別に設けます。

 

このように製品の特性をより強調することで、有用性の高さをアピールし、既存市場内の一部の顧客に歓迎され細分化が促進されます。

 

2.サイズ変更
単に分量を変えて、新製品として市場に投入します。

 

スナック菓子の徳用サイズやパーティーサイズ。

 

清涼飲料水では2リットルのペットボトルや500ミリリットルのペットボトル、350ミリリットルのアルミ缶などあります。

 

製品自体に変更は加えず分量を変更しただけです。

 

この手法により、顧客の一度の消費量に合わせた販売や、使用機会に応じた販売が可能になります。

 

3.パッケージング
パッケージを変更し、既存の製品に対するイメージを新たにします。

 

パッケージが変わるだけで消費者の製品に対するイメージが変化する例があります。

 

例えば、本のパッケージは表紙です。

 

本の表紙を変更しただけで売上を大きくした例に、集英社文庫があります。

 

集英社文庫は名著の表紙を有名漫画家やイラストレーターのイラストに差し換えることで売上を大きく伸ばしました。

 

パッケージの変更の大きな特徴に、製品そのものには変更がないことにあります。

 

本の例で言うと、本の内容は一切手を加えずに表紙だけ変更することでイノベーションが起こせます。

 

また、パッケージの変更に伴って、サイズの変更も実施されることもあります。

 

4.デザイン変更
製品本体等には手を加えず、見た目を変更する方法です。

 

自動車産業では、既存車の仕様のまま外観を変更し、新車種とした発表することがあります。

 

デザインを変更することで、製品のスタイルやポジショニングも変更でき、関心をよせる新たな客層を取り込めます。

 

製品の品質向上が頭打ちになった産業では、デザインによるイノベーションで競合他社との差別化を図ろうとする企業が出てきます。

 

5.付加物
既存製品に新たな素材を加えることです。

 

例えば、柔軟剤に香りを加えたり、ヨーグルトに細かくカットした果実を加えたりといった「〇〇入り」といったものです。

 

新たな要素を加えることで、人々の関心を集めようと取り組みます。

 

6.負担軽減
製品を購入するにあたり、顧客の負担する労力やコストを和らげる方法です。

 

最低価格保証を謳い、どこよりも安く買えるようにしたり、取引がインターネットでも可能になり店舗に出向く必要性をなくしたりします。

 

また、顧客のリスクを和らげるため、返金保証をつけたりもします。

 

製品より得られる便益は変わらないものの、顧客の負担を減らすことで、顧客に高い価値を感じさせます。

 

 

以上、既存市場内におけるイノベーションについてお話しました。

 

最後にイノベーション手法をまとめると次のようになります。

 

 1.改変
 2.サイズ変更
 3.パッケージング
 4.デザイン変更
 5.付加物
 6.負担軽減

 

いずれも製品の基本的特性に手は加えていないため、比較的簡単に起こせるイノベーションです。

 

容易なイノベーションとはいえ、潜在的な顧客を顕在化させたり、あらたなターゲットを取り込めたりといった大きな効果が見込めます。

 

新製品を開発して、ターゲットのセグメントを拡大したいときには、上記の6つのイノベーション手法を思い起こすと容易に開発できます。


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