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人的販売【プロモーション・ミックス】

 

人的販売とは、字面通り、人を使って購買を促すマーケティング手法です。

 

プロモーション・ミックスの他の手法では、消費者の購買行動に変化を与えたり、意欲を高めたりするものが多い中、直接販売活動を行います。

 

具体的には、販売員や営業員が顧客と対話して販売契約を締結します。ちなみに、人的販売を英語ではPesonal Sellingといいます。

 

なお、販売員の集団をセールス・フォースといい、人的販売の設計はセールス・フォースの設計と同義ともいえます。ただし、本項では人的販売の原則について説明します。

 

「人的販売」は昔から使われていた馴染みあるプロモーション

「マーケティング」という言葉が広まるはるか以前より、人的販売というプロモーションは用いられていました。直接顧客と対話する営業は自然と行われており、かねてより人的販売を実践していました。

 

人的販売の利点は何と言っても、人と人が直接対話できることにあります。

 

販売員は消費者と対話形式で商品をアピールでき、消費者はその場で直接、商品についての疑問を解消することができます。双方向のやり取りができるのです。

 

広告にも商品の仕様を記載してはいるものの、あらゆる消費者が完全に仕様を理解できるはずはありません。どうしても細かい疑問は湧き出ますし、そういった疑問点は購買の不安になります。

 

販売員に直接疑問を投げかけられるのであれば、消費者はすぐに疑問を解消でき、販売員としても消費者のアピールに繋がるため、契約締結に好影響を与えます。

 

インターネットが普及したため、製品の仕様の比較や利用者の体験談を簡単に知ることができるようになりました。

 

そのため、現代は消費者の目が肥えており、賢い購買選択が出来るようになっています。

 

したがって、人的販売は従来からあったものの、現在では求められるものが変化しています。

 

従来型の広告主体の一方通行なコミュニケーションや製品の売り込みに終始する営業担当者は求められなくなっています。

 

人的販売に求められているものは、単なる売り込みではなく、顧客との円滑な取引の手助けや、顧客の問題を解決する提案、市場の声を企業に届ける顧客と企業の架け橋、などの重要な役割です。

 

そのため、営業担当者はより深い知識と高いコミュニケーション能力が求められます。

 

人的販売の原則

前述したとおり、人的販売はただの売り込みではありません。

 

手当たり次第に電話をかけたり、飛び込み営業をかけたりといった何ら計画性のない手法について語るわけでも、強引な売り込みをかける営業について語るわけでもありません。

 

人的販売における販売プロセスは、まず販売機会を評価することから始まります。

 

見込み客の発見は企業が行っており、販売員は販売活動に専念することができます。

 

販売員は見込み客に接触し、契約が見込めるか否かを評価します。

 

見込み客を訪問する前には、予め見込み客のニーズや意思決定担当者など購買に関わる情報を頭に入れておきます。

 

訪問時には、その訪問が何を目的にしているのかを明確に定めておきましょう。初めての訪問で成約に持っていけるとは限らず、複数回の訪問で成約に至ることが一般的です。

 

見込み客と対面したら、プレゼンテーションに入ります。

 

消費者の購買心理に沿ったアプローチを心がけましょう。AIDMA(あるいはAIDA)、や購買決定プロセスなどです。

 

買い手に製品を認知してもらい、興味関心を持たせ、購買行動を取らせます。

 

買い手にアピールする際は、FABVアプローチを取りましょう。

 

FABVとは、

 

 ・Feature(特徴):製品自体の物理的な特徴。
 ・Advantage(利点):製品の特徴がどのような恩恵をもたらすか。
 ・Benefit(ベネフィット):製品のもたらす経済、技術、サービス、社会など、さまざまな場面における便益。
 ・Value(価値):製品がもたらす価値。

 

を意味します。

 

プレゼンテーションでは、概して製品の特徴ばかり伝えることが多いのですが、アピールすべきポイントは特徴だけではありません。

 

製品を購入することで買い手にどのような得があるのか、ベネフィットや価値といった買い手が本当に知る必要のあることの説明が不十分なことが多いです。

 

プレゼンテーションの間、必ず見込み客は反対意見を出してきます。

 

お金がかかりすぎるのではないかという不安、製品を購入して現状が変わることへの不安、ためらい、などの心理的抵抗と、品質、価格、納期などの不満からくる論理的抵抗に遭います。

 

こうした反対意見をうやむやにしては、成約に至りません。

 

買い手は、こうした反対意見を解消してくれるのを営業担当者に期待しています。

 

反対意見が間違っている、あるいは解消できることを明確にすることで、反対する理由を購買する理由に変えられます。

 

販売プロセスの大詰めに、成約があります。

 

プレゼンテーションが終わり、反対意見も解消できたら、契約を成立させます。

 

購入してくださいと頼んだり、条件を確認したり、成約に特典がつくことを伝えたりして、成約に持ち込みます。

 

最後に忘れていはいけないことが、フォローです。

 

成約したら最後、買い手との関係はこれで終わり、となるはずありません。

 

セオドア・レビットは販売が成立したら「販売員の不安は消え、顧客の不安が始まる」と述べています。

 

企業からすれば、製品が売れてホッとしたでしょうが、購入者はこれから製品がどのような価値をもたらしてくれるのか不安でたまりません。

 

購入後に生じる顧客の問題を解消するためにも、その後のフォローやメンテナンスは必要となります。

 

顧客との長期的な関係構築を目的とするマーケティングをリレーションシップ・マーケティングというのですが、一度製品を販売した後も顧客との関係は続きます。

 

特に、継続した取引関係を望むなら、成約後のフォローも重要です。

 

契約成立後も気にかけてくれる企業と、放ったらかしの企業、どちらが顧客にとって関係を持続させたいかを考えれば明らかに前者です。


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