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価格設定(プライシング)の重要性と従来型の価格設定の問題点

 

プライシング

価格の設定をプライシングと言います。

 

価格の設定にはさまざまな方法がありますが、ここでは従来の一般的な価格設定法とその問題点についてお話します。

 

プライシングについてご紹介する前に、プライシングは戦略的に考えるべきものであることを理解していただきたいため、まずは従来のプライシングの弊害を知っていただきたいのです。

 

「価格」はご存じのとおりマーケティングの4Pの一要素であり、マーケティング上、非常に重要な要素です。

 

4PのPriceは主に価格の設定すなわち、プライシングを主な活動としています。

 

プライシングがなぜ重要なのかというと、価格は独立した要素ではなく、マーケティングの4Pの要素が相互に関わるものだからです。

 

特に、プロモーションには価格主導プロモーションと非価格主導プロモーションに分けられ、プロモーションと価格は密接に結びついています。

 

実際に、低価格をウリにしているプロモーションをよく見かけていることと思います。

 

コストプラス法――従来型の価格設定の弊害

企業にキャッシュを与えることができるのは顧客のみであり、その量は製品の販売量とその価格によって決まります。

 

つまり、価格は企業が獲得するキャッシュに直接影響を与えます。

 

これほど重要な価格なのですが、従来の価格設定は戦略性のない企業本位な設定法でした。

 

その一つをコストプラス法といい、“コスト”に“プラス”するというように、製品の価格をコストに一定の利益を乗せて設定するという方法です。

 

コストプラス法。製品の価格をコスト(固定費と変動費)に利益を上乗せして設定する方法です。

 

上図のように、コスト(固定費と変動費)に利益を積み重ねているイメージです。

 

企業の目的は利益であり、製品の販売によってしか利益を獲得できないため、ある面では合理的なプライシングです。

 

上図にある固定費、変動費は製品1個当たりのコストであり、1個販売すればコストに利益を上乗せしてキャッシュを回収できるわけです。

 

コストは価格の下限であり、基本的にコスト未満の価格を長期間維持することは不可能です。そのため、製品は必ずコストに利益を乗せた価格で販売されます。

 

どんな価格設定であれ、基本的にはコスト+利益の図式は崩れませんが、コストプラス法にはいくつか問題点があります。

 

一つは、コストダウンの意識が甘くなります。必ずコストに利益を上乗せするため、かかった費用は確実に回収できてしまいます。そのため、売り手側にコストダウンの意識が働きにくくなります。

 

二つは、コストプラス法はコストダウンの意識が甘くなり、高価格になりがちなため、競争において不利になります。

 

現在ではインターネットの普及により、各メーカーの価格を容易に参照でき、消費者の判断力が高まっています。そのため、単純な高価格では売れなくなっています。

 

三つは、需要の価格弾力性を考えていないことです。

 

経済学では価格を下げることで需要が増えるとしています。

 

高級ブランド品では低価格はブランドイメージが損なわれ、需要が少なくなるということもありますが、大方の製品は価格が低くなると需要が増します。

 

問題は価格が下がるといくら需要が増えるかです。価格の下げ幅に対し、需要がどれだけ変化するかを表した指標が価格の需要弾力性です。

 

具体的に表すと、 需要の変化率 / 価格の変化率 となります。価格弾力性が高いとは、価格が下がると大きく需要量を伸ばすことを意味します。

 

逆を言えば、価格が上がると大きく需要量を減らします。

 

価格弾力性が売上に及ぼす影響を具体的な数値を用いてご説明します。

 

製品価格が100から90に減少したとき、製品Aの販売数は100から110に変化しました。また、製品Bの販売数は100から120に変化しました。

 

このとき、販売数の変化が大きい製品Bの方が価格弾力性は高いと言えます。

 

さて、値下げ前の売上高は価格×販売量より、どちらも10,000です。

 

では、値下げ後の売上高はというと、製品Aは9,900、製品Bは10,800となります。なんと製品Bは値下げした方が売上高が大きいのです。

 

このように、製品には価格弾力性が存在し、製品によっては価格が低い方が売上高が高くなる場合もあるのです。

 

しかし、コストプラス法は一定の利益を上乗せするため弾力性が考慮されず、売上を伸ばす機会を見落としてしまいます。

 

価格戦略の問題は価格×販売量が最大となる価格を見つけることです。

 

以上、コストプラス法についてお話してきました。

 

しかし、従来型の価格設定はコストプラス法以外にも、安易な低価格販売などがあります。

 

従来型の価格設定法の問題に共通しているのは戦略性の欠如です。

 

コストに一定の利益を上乗せする、戦略性なしに低価格で販売するといったプライシングは競争の優位性や利益獲得の機会を失ってしまうことが問題なのです。

 

マーケティングのPriceは価格戦略であり、価格も戦略思考をもって設定することが望ましいです。


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