マーケティング・チャネルの設計1|顧客の望むサービスの水準、チャネルの目的
チャネルの「長さ」、及び「幅」を知ることでどのような選択がとれるのかわかりました。チャネルの選択肢を確認したら、マーケティング・ャネルの設計に移行します。
チャネルの長さと幅を決定するプロセスがチャネルの設計です。
そして、チャネルの役割とは、顧客に適切に製品・サービスを届けることです。
そこで、まずは顧客が求めるサービス水準について分析する必要があります。
顧客が求めるサービス水準
チャネルによって実現できるサービス水準は異なります。あらゆる顧客を満足させる製品は存在しないように、あらゆる顧客に対応できるチャネルシステムも存在しません。
そのため、まず自社のターゲットとなる顧客がどのようなサービスを求めているのか把握し、それに対応できる適切なチャネルを設計します。
同じ製品を取り扱っていても競合とチャネルが異なることは十分ありえます。企業のサービスに何を求めるかは顧客によってまちまちで、競合とターゲットが異なれば対応するチャネルも異なります。
例えば、生命保険や証券などの金融分野では、営業担当者が顧客と対面してきめ細やかな対応をするチャネルもあれば、インターネットで全ての機能が提供できるチャネルもあります。
それぞれのサービスでターゲットが異なります。営業担当者がフォローしてくれる分費用はかかるが、きめ細かい対応を望む顧客もいれば、少しでも費用を節約したいと望む顧客もいます。
このように顧客が望むサービス水準でチャネル対応が変わってきます。そのため、顧客が望むサービス水準を把握することは重要です。
顧客が望むサービス水準の分析のためには、次の5つの観点が役に立ちます。
1.一回の購入量
顧客が一度の買い物でどれだけの量を購入するかです。
食料品にしても、大家族なら車で郊外の多くの車を収容できる広々とした駐車場を備えた郊外の大規模な店舗で大量に購入するかもしれません。
単身者であるなら自宅近隣の店舗で小分けに購入することを望むかもしれません。
2.待ち時間と配達時間
顧客が製品を受け取るまでの時間です。
基本、時間は短いこと、指定した時間通りに届くことが望ましいです。
配達サービスでは翌日配達を謳い、製品の早い配達を望む顧客のニーズに対応しています。
また、Amazonは最短で当日配達が可能になっており、注文してから可能な限り早く入手したい顧客にも対応しています。
3.空間的利便性
その製品がどれくらい買いやすいかという指標です。
自宅から訪れやすいほど空間的利便性は高いです。
毎日のように利用するスーパーであれば自宅から近いことが望まれますが、滅多に利用しない高級百貨店であれば多少遠くても問題なく利用されます。
4.製品の多様性
チャネルが提供する製品の品揃えです。
豊富な品揃えは製品の選択肢を増やし、消費者の欲しいものが見つかりやすくなります。そのため、品揃えは豊富なことが望ましいとされます。
5.サービスのバックアップ
サービスのバックアップとは、付属のサービス(配送、取り付けなど)を指します。
付属のサービスが高いレベルで提供されることが望ましいですが、サービスの質はコスト高にも繋がります。
そのため、コストとの折り合いをどうつけるかは、ターゲットの顧客と向き合うことで見極めます。
チャネルを設計する目的とチャネルの制約
顧客が求めるサービス水準の分析を終えたら、次はチャネルを設計する目的を確認します。
自社製品のサービス水準や製品の特性によって、チャネルの目的は変わります。
あらゆる状況や目的に対応できるチャネルは存在しないため、目的を定めてそれに適したチャネルを設計する必要があります。
例えば、生鮮食品のような傷むのが早い製品の場合は、素早く消費者の元に届けるチャネルを実現することが目的です。
この目的の実現のために、産地から温度管理を徹底することや迅速な配送が可能なチャネル設計を心がけます。
また、流通業者を利用することのメリット・デメリットも考慮してチャネルを設計する必要があります。
大手の小売店を利用することで販売機会の拡大を狙えますが、値下げ販売されるなどで製品やブランドイメージを損うリスクを抱える短所があります。
自社の直営店では、価格の管理やブランドイメージを構築する売り場作り、徹底した販売員の教育などが可能です。しかし、高コストとなる短所があります。
オンラインでの販売では、24時間365日という営業時間の制約がありません。顧客の都合の良い時間に販売が可能になる長所があります。また、棚面積の制限もないためいくらでも製品を揃えることができあmす。
ただし、手元に製品がないため実物を確認できない、手元に届くまで時間がかかるといった短所もあります。
チャネルの設計にあたり、チャネル設計の目的とコストや経営資源、それぞれのチャネルの長短、法の規制といった制約を十分考慮したうえで最適なチャネルを構築することが大切です。