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ターゲティングのアプローチの種類

 

セグメンテーションにより、異なるニーズを持つ市場集団の違いが明確になったら、これから攻めていく細分化市場を選定します。すなわち、ターゲティングです。

 

細分化された市場は、有用なセグメントの要件を満たしたいるか、自社の目的や経営資源を鑑みて標的にする価値があるか、競合状況などを確認します。

 

検討の結果魅力的な市場セグメントであろうと、長期的な観点から見て企業の目的から外れてしまうなど、市場の魅力とは別の理由で投資を諦めることもあります。

 

さて、セグメントの確認をしたら、次は標的市場の選定に移ります。標的市場は一つのセグメントに絞る以外にも選択肢があります。マーケターは戦略に応じて、標的市場を選定します。

 

以下では、標的市場の選定パターンを紹介します。

 

コトラーによる標的市場選定法

コトラーは標的市場の選定と市場に合わせた製品・サービスの投入(マーケティング・ミックス:マーケティング・ミックスについては後の項目で解説)の組み合わせを3つにまとめました。

 

1.非差別化マーケティング
1つのマーケティング・ミックスを、全ての市場あるいは1つの巨大なセグメントに投入するマーケティング手法です。

 

大きな市場を狙うため、大量生産による規模の経済性を活用して製品当たりの生産コストやマーケティングコストを抑えることが可能です。

 

セグメント間の差異を考慮しないため、この手法はマス・マーケティングに当てはまります。

 

2.差別化マーケティング
複数のマーケティング・ミックスをそれぞれ異なるセグメントに投入するマーケティング手法です。

 

異なるセグメントに異なる製品を投入することで、それぞれのニーズを満たすことができます。

 

いわゆるフルラインと呼ばれる戦略で豊富な製品ラインを取りそろえることで細かなニーズにも対応ができるというメリットがあります。

 

ただし、個別のニーズに個別に対応するため、規模の経済性が発揮できず、コストがかさむというデメリットがあります。

 

3.集中マーケティング
ある1つのセグメントに経営資源を全投入するマーケティング手法です。

 

この手法は特にニッチが当てはまります。経営資源に乏しい企業がしばしば取る手法で、非常に強い専門性を持ちます。

 

ただし、リスクの分散ができません。

 

標的市場選定パターン マーケティング・ミックス 対応するセグメント
非差別マーケティング 1つ 1つ(細分化しない市場、あるいは巨大セグメント)
差別化マーケティング 複数 複数(マーケティング・ミックスとは1対1で対応する)
集中マーケティング 1つ 1つ(細分化した内の1つ)

 

コトラーの選定パターンを表にまとめると以上のようになります。

 

エイベルによる標的市場選定法

D.F.エイベルは標的市場選定パターンを5つに分けました。

 

マーケティング戦略を標的市場と投入する製品の2つの軸で捉え、市場対製品の組み合わせパターン5つの内から方針を検討します。

 

1.単一セグメント集中型
1つの市場、1つの製品に着目するマーケティングで、コトラーの標的市場選定法における集中マーケティングと同様の方針です。

 

単一の市場に専門化するため、セグメント内では強力な影響力を持つことができます。

 

自動車市場では、スポーツカー市場に集中するポルシェのような企業の方針が、単一セグメント集中型に当てはまります。

 

しかし、単一事業に企業の命運を任せるというリスクがあります。もし、標的市場および製品が衰退した場合、企業も時流によって業績を大きく落とすことになります。

 

例えば、スポーツカー自体の需要が落ち込んだときポルシェの業績も落ち込んでしまうことになるでしょう。

 

2.製品専門型
ある1つの製品を複数のセグメントにまたがって販売する方針です。

 

例えば、弁当を自社店舗、コンビニ、スーパーマーケット、大学などの学食、宅配などに販売する事業のように、さまざまな販売市場や顧客を抱える事業が当てはまります。

 

製品特化型とも言うべき企業方針で、どの市場でもその製品の影響力は強力です。

 

しかし、もし製品がテクノロジーに依存した場合、代替技術によって需要が取って代わられる場合があります。

 

かつて普及したポケベルは携帯電話にその地位を奪われ、二度とかつての需要を手に入れることはないでしょう。

 

3.市場専門型
製品専門型とは逆に1つの市場に複数の製品を販売する方針です。

 

特定の顧客群に多様な種類の製品を販売する方針で、標的の顧客群からはさまざまなニーズを満たしてくれる企業として高い信頼を得られます。

 

顧客群の予算の削減に伴い売上も縮小してしまい、相手の財布に売上を委ねてしまうというリスクがあります。

 

4.選択的専門型
複数のセグメントを選択する方針で、異なるセグメント間は市場や製品の観点では共通しません。

 

基本的に企業の理念や目的に合った市場と製品なら標的にするという戦略で、セグメント間のシナジーは期待できません。

 

それぞれの事業が互いに関連しない反面、リスクの分散が図れるマルチな戦略です。

 

5.全市場浸透型(フルカバレッジ)
全ての顧客群の求めるあらゆる製品を提供する方針です。

 

全市場、全製品をカバーできるのは、莫大なコストを賄える巨大企業のみです。例えば、自動車のトヨタはや飲料メーカーのコカ・コーラなどはありとあらゆる製品を販売しています。

 

基本的にはセグメント間の差異を考慮しない非差別マーケティングと同様です。

 

しかし、セグメント間の差異に着目し、あらゆるセグメントに対応するため、個別にブランドを起ち上げる戦略も可能です。

 

トヨタ車は大衆車というイメージを市場から持たれているため、高級車市場にはレクサスというブランドを設立し、高級車市場を攻めました。

 

高級車市場というセグメントを攻めるため新たなブランドを起ち上げ、セグメントのニーズに個々に対応するという戦略を取ることで、実質的にあらゆる市場・製品をカバーすることができます。

 

エイベルによる標的市場選定パターン。基本的に企業は市場を選択する際、この5つのパターンのどれかから選ぶことになります。ある1つのセグメントに集中するか、バラバラのセグメントを選択するか、製品、あるいは市場に特化するか、全ての製品と市場をカバーするかに収まります。

 

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