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広告:5つのM【プロモーション・ミックス】

 

広告とは

広告はプロモーションの代表的な手段で、ときには、広告がマーケティングそのものと誤解されることさえあります。

 

広告は製品を認知させるにも、製品への選好を確立させるにも、消費者を教育するにも、啓蒙するにも、企業が不特定多数の人々にメッセージを発信するのに効率の良い方法です。

 

広告は企業が人々の意識に働きかける主要な手段の一つであるため、大きな市場を形成するほど、企業は広告に多額の費用をかけています。

 

電通調べの「日本の広告費」によると、2014年の日本の総広告費は6兆1,522億円です。

 

内、4大メディア(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)の広告費は2兆9,393億円、インターネットは1兆519億円です。

 

4大メディアとインターネットを足し合わせると、3兆9,912億円となり、総広告費の約65%を5つのメディアが占めます。

 

日本全国の企業合わせて、これほどまでに多くの金額を広告に使っているのです。

 

では広告とは一体どういうものか、どう作成されるのでしょうか。

 

マーケティング研究者のコトラーとアームストロングは広告を次のように定義しています。

 

明示された広告主によるアイデア、財、サービスに関する非人的な提示とプロモーションであり、しかも有料形態をとるもの。

 

つまり、広告の要件は、

 

 1,広告主が明示されていること
 2.非人的であること
 3.有料であること

 

となります。

 

5つのM

広告作成時に、決定する5つの重要な事項をまとめて、「5つのM」といいます。

 

5つのMの内訳は以下の通りです。

 

 ・Mission(ミッション)
 ・Money(予算)
 ・Message(メッセージ)
 ・Media(媒体)
 ・Measurement(評価)

 

広告の目的を定め、どれくらいの予算で、どのようなメッセージを、どの媒体で送るかを決定し、最終的に結果を評価します。

 

5つのMの詳細は次の通りです。

 

Mission(ミッション)
広告目的とは、一定期間で標的視聴者を対象に行われる達成すべき課題のことです。

 

例えば、「自動車を保有する男性□□万人の内、新ブランド〇〇をラグジュアリーブランドとして認識する割合を△△%増加させる」といった目的を打ちたてます。

 

広告は目的に応じて次のようなタイプに分けられます。

 

●情報提供型広告
情報提供型広告は、消費者が認知していない製品の価値を認識させることを目的とします。

 

例えば、新製品の導入、既存製品の新機能など、新しい情報を発信する場合に用いられます。

 

したがって、主に製品ライフサイクルの導入期に使われるタイプです。

 

●説得型広告
説得型広告は自社製品への需要を生み出すために、消費者を「好意→選好→確信→購買」と向かわせることを目的としています。

 

自社の提供する価値がどれだけ優位性を持っているかを示す必要があります。

 

アメリカではしばしば競合他社を引き合いに出す、「比較広告」を用いて、自社の相対的な競合優位を示します。

 

●リマインダー型広告
リマインダー型広告は、自社製品を思い出させる(リマインダー)ことで、製品のリピート買いを促すことを目的としています。

 

成熟した市場で用いられ、製品の認知度は既に十分あるため、製品の仕様の詳細よりも、製品を想起させるメッセージを用いることが効果的です。

 

●強化型広告
強化型広告は、顧客が製品を購入したことが正しかったという思いを強化させることを目的としています。

 

例えば、広告にはユーザの満足している様子を掲載し、それを見た顧客もその製品の購入は満足のいく選択だったと納得できるように促します。

 

Money(予算)
広告予算の設定はプロモーション予算の設定とほぼ同様で『効果的なプロモーション戦略の設計・後半』を参照してください。

 

ここでは、広告予算を設定する上で考慮すべき要因について説明します。

 

1.製品ライフサイクル
導入期や成長期といったライフサイクルの前半は、製品の市場認知度の上昇や市場シェア獲得のために多額の費用を充てます。

 

通常、新製品には多く予算を費やすため、既存の製品、既に市場で認知されている製品は相対的に広告予算の割り当てが少なくされます。

 

2.市場シェア
市場シェアの高い企業が現在のシェアを維持する場合、通常、売上高に対する広告費の割合は少なくなります。

 

ただし、シェアの拡大を目指すなら、それに応じて広告は増えます。

 

3.競争の混雑度
競合の数が多く、競合が多額の広告費をかけるほど、自社も多くの広告費をかけなければなりません。

 

4.広告のフリークエンシー(繰り返し)
メッセージを理解してもらうため、繰り返し視聴者に到達します。頻度が多いほど広告費も多くなります。

 

5.製品の代替性(コモディティ)
競合他社とあまり差別化されていない製品(コモディティ製品)は、競合と差別化していることを認識させるため、より広告に注力します。

 

Message(メッセージ)
メッセージの作成には次の3ステップを踏みます。

 

1.メッセージの作成と評価
効果の高い広告は普通、1つないし2つの核となるテーマに焦点を当てています。アピールするポイントが多すぎると焦点がぼやけて、消費者が製品の特長を認めることができなくるためです。

 

例えば自動車の特長の場合、燃費が良く、環境に優しく、頑強で、ハンドリングも良く、…、というように次々とアピールポイントを述べられても、視聴者からすれば「結局どういう車なの?」とイメージが掴めなくなります。

 

核のテーマは1つか2つというところに注意しましょう。

 

また、効果的なメッセージは、消費者やディーラーから直接聞き取ってから作成する「帰納的」な方法と、消費者にどのような影響を与えられるか推測する「演繹的」な方法があります。

 

メッセージが出来上がっても、実際に効果があるのかテストする必要があります。アンケートを取って、どんな影響を与えるか調査しましょう。

 

2.クリエイティブの制作と実施
メッセージはどのように表現されるかで伝わり方が変化します。

 

内容、トーン、言葉、フォーマットなど、適切な表現方法を選択します。

 

3.社会的な責任の再検討
広告は社会的、及び法的規範を逸脱してはいけません。

 

差別的な表現、誇大広告などは社会的に忌避されるものです。こういった表現は消費者からの信頼を損なってしまい、場合によってはさまざまな方面から抗議が殺到するケースもあります。

 

法的規範を逸脱するのはもってのほかで、例えば薬事法に違反するような広告表現を用いて、逮捕される事例が多くあります。

 

Media(媒体)
メッセージが決定したらどの媒体を用いて発信するのか決定します。

 

媒体選びには、次の5つの要素を考慮します。

 

1.リーチ(R:到達範囲)
期間内に一度でもメッセージが到達する視聴者の数。

 

2.フリークエンシー(F:露出頻度)
期間内にメッセージが視聴者に到達した回数。

 

3.インパクト(I)
メッセージの質的価値。

 

4.全露出回数(E)
リーチと平均フリークエンシーを掛けあわせた指標。 E=R×F。

 

グロス・レイティング・ポイント(GRP)とも呼ばれ、標的視聴者に露出される広告の全体量を意味します。

 

標的視聴者(R)の60%に、平均4回到達(F)した場合のGRPは、240GRP(=60×4)となります。

 

5.ウェイトづけされた露出回数(WE)
リーチ、フリークエンシー、インパクトを掛けあわせた指標。 WE=R×F×I。

 

これら指標は基本的に、高いほど効果が高いことを意味します。媒体を選択する際は、最も費用対効果の高い、R、F、Iの組み合わせを考えます。

 

全く世に知られていない新製品を世に出す際は、到達範囲の広さが重要視されます。

 

露出頻度は少なすぎると、製品を忘れられてしまいますが、あまりにも多いと、消費者が食傷気味になり、視るのを避けようと思ってしまいます。

 

リーチ、フリークエンシー、インパクトの理想的な按配の組み合わせを探したら、広告媒体を選択します。

 

媒体には次のようなタイプがあります。

 

 テレビ、新聞、雑誌、ラジオ、インターネット、DM、電話、屋外広告、ニューズレター、パンフレット

 

標的視聴者、製品特性、メッセージ、コストなどの方面から媒体を決定します。

 

例えば、ファッションブランドであるならビジュアル面をアピールする必要があるため、ラジオのような音声ではメッセージが伝わりません、色彩も重要なためカラー印刷された紙面が良いでしょう。

 

したがって雑誌広告、さらには標的視聴者が購読する雑誌に出稿することが最適です。

 

Measurement(評価)
最後のステップに、広告の効果を見極めます。

 

広告前と後で、消費者の認知、理解、選好にどう影響を与えたか、売上にどう貢献したか測定します。

 

コピー・テストといい、広告掲載前と掲載後の広告のコミュニケーション効果を測ります。

 

広告の事前テストには次のようなものがあります。

 

消費者フィードバック法は、実際に広告を消費者に見せて、どんなメッセージを受け取ったか、この広告はあなたどんな影響を与えようとしているか、広告を見て行動するか、などの質問をする方法です。

 

ポートフォリオ・テストは、消費者にいくつか広告を見聞きしてもらい、どんな広告か思い出してもらう方法です。どれだけ、広告が印象的か、理解され記憶に残るかが測定できます。


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