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激動する市場競争環境

 

21世紀に入って以降、ビジネスの競争環境は激動の時代となりました。

 

現代では何かにつけ「ビジネスは変化が激しい」と言われます。これは、環境が変化し、それに対応できない企業が成功を収めにくくなっていることを意味しています。

 

環境が大きく変わった現代において、マーケティングで成功を収めるためには現状を理解する必要があります。

 

では、具体的に競争環境がどう変わったのか、またどう変わっているのかをここでお話します。

 

なお、以下に挙げるポイントは、それぞれが完全に独立した問題ではなく、相互に関わりのあるものもあります。

 

例えば、ブランドの数の増加は、製品ライフサイクルに影響を及ぼしますし、製品の多様化にも影響を与えます。

 

一つの変化がさまざまな面に影響をを及ぼすことがあるのです。

 

競合の数は減ったが、ブランドの数は激増した

メーカーの多くは、市場から市場から撤退するか、吸収されるかして数を減らしました。

 

中小企業白書(付属統計資料)を見ると、製造業の企業数は1999年には607,626なのに対し、2009年には448,087に減少しています。

 

製品を生産する第二次産業の要である製造業が、10年間で4分の1以上数を減らしています。

 

メーカーの数は減ったものの、彼らが生産するブランドの数はますます増えてきています

 

小売店に行けば同じメーカー、同じ製品カテゴリーにありながら、異なるブランドの製品が数多くあることが確認できます。

 

ブランド数が増えた要因に、以下の3つが挙げられます。

 

 @セグメントのニーズに適合する製品を改良し続け、市場細分化を推し進めた結果、多様なセグメントが生まれた。

 

 A多数のブランドと一度に競争するのは、1つの支配的なブランドを攻め落とすよりも難しいため、戦略的な理由でブランドを増やした。また、断片化した市場は、新規参入を抑制する効果もある。

 

 B保有するブランドが多いほど、メーカーは流通業者に対して強い交渉力を発揮できる。例えば、あるブランドが多く値引きされても、他のブランドの値引きを抑えることでカバーできる。同じブランドの新製品より、新ブランドの新製品の方が小売店の棚に置かれやすい。

 

このように、市場のプレイヤー数は減少していますが、ブランド数は増加しています。

 

製品ライフサイクルの大幅な短縮

製品ライフサイクルは新製品を市場に投入してから衰退するまでの寿命ですが、現在では寿命が大幅に短くなっています。

 

その理由の1つ目は、新製品が容易に開発できるようになったことです。生産過多な現在では、企業は過剰な生産能力を有しているため、新製品の投入はより容易になります。

 

製品にちょっとした変更を加えたでけでも新製品が出来上がるということは、最小限のコストで新たな製品を開発でき、少ない期間で投資コストを回収できる程度の間売れてくれればいいということになります。

 

2つ目は、新製品をすぐに試してみようと意識する消費者が増えたことです。

 

そして消費者は試した結果、新製品の方が良いと思えば、簡単に以前使っていた製品から乗り換えます。

 

反対に、新製品に満足しなければ、以降は新製品を購入することはなくなります。

 

最後に、3つ目の理由として続々と新ブランドを投入して競争していることです。

 

新たなブランドが市場に投入されれば、既存のブランドは売上を奪われます。そして、新ブランドに対抗するために、こちらも新ブランドを投入して売上を取り返そうと試みます。

 

すると、やはり競合も新ブランドには新ブランドを、というように新ブランド投入による競争を繰り返します。

 

こうした結果、製品ライフサイクルは短くなっていくのです。

 

デジタル時代の到来

今日は画像、音声、動画、テキスト、データなど、あらゆるものが0と1で表されるデジタル時代となりました。

 

デジタル化の恩恵により、家庭では一人ひとりに高機能なコンピュータや携帯情報端末を手にし、電化製品により家事などの煩わしい作業を簡便に、あるいは解放させてくれました。

 

さらには、インターネットの登場により、世界中の何億人という人がコストをかけずに繋がることができるようになりました。

 

インターネットの普及はライフスタイルを大きく変えました。

 

生活に必要なものはインターネットで買えますし、人と交流したければSNSを使えばいい、知りたい情報があれば検索エンジンに単語を入力すれば関連する情報を持つサイト一覧が表示されます。

 

インターネットは、消費生活、コミュニケーション、情報に大きな革命をもたらしました。

 

これらは、数十年前からすれば思いも寄らないでしょうが、今となっては当たり前の環境です。

 

さて、このデジタル化の革命はこれからどうなるのでしょうか。

 

特許の数が増加している

科学技術の発展により、既存製品はさらなる改良により、新たな技術を生み出し、新製品を開発します。

 

そうした、産業の発展に寄与する発明は特許に登録でき、世界中で莫大な数の特許の申請が行われています。

 

日本では特許庁に毎年30万〜40万件の特許出願があり、毎年新たに多くの特許が登録されます。

 

実際、特許登録件数は2004年には124,192件、2013年には277,077件と倍近く増えています。

 

既存製品の多様化

ありとあらゆる製品カテゴリーに、多様な製品が含まれています。

 

明治のヨーグルトには「ブルガリア」の銘柄だけでも20以上あります。全銘柄を合わせれば40以上。

 

プレーンをはじめ、脂肪ゼロ、低糖、飲むヨーグルト、サイズ違い、果物入り、などさまざまあります。

 

おそらく「ヨーグルト」というカテゴリーに求められるものは全て揃えっていると言えるほど、品揃えは充実しています。

 

差別化を図るため、多様なニーズに応えるために、市場を細分化した結果、製品ラインナップも多様化しました。

 

こうした細分化はあらゆる製品市場で行われ、極度に細分化して行き着く先は、顧客一人ひとりのニーズに適合したワン・トゥ・ワン・マーケティングです。

 

また、行き過ぎた市場細分化は、市場規模を小さくし、十分な投資利益率を見込めなくなってしまいます。

 

新製品が消費者の印象に残りにくくなった

あらゆるカテゴリーの市場セグメントが細分化しており、広告メディアもまた細分化の例に漏れません。

 

テレビ・ラジオのチャンネル、新聞・雑誌は専門的に多様に分化しており、一つのメディアで広告を流せば数百万人に行動を促せるような状況ではありません。

 

さらに、多様なメディアから毎日さまざまな広告メッセージを消費者は受け取ります。

 

しかし、日に数千もの広告のほとんどは、消費者の選択的な行動によって無視されるため、新製品を打ち出したとしても消費者に到達することが困難になってしまいました。

 

多様な形態でコミュニケーションを取れるようになったものの、そのほとんどが埋没してしまい、消費者のマインドに新製品を印象つけることができなくなってしまったのです。

 

企業は、細分化され多様になったコミュニケーション・チャネルを用いて、どのように競合に埋もれないコミュニケーションを取るか日々模索しています。

 

まとめ

結論から言うと、競争は激化しており、その原因は主に3つに突き詰められます。

 

ブランドの激増極度の市場細分化による市場の飽和消費者とのコミュニケーションが困難、の3つによって市場の競争はますます激しくなっています。

 

現代の企業は、この状況下でマーケティングはどのような役割を果たせるのか、という困難な課題に直面しています。

 

この過酷な競争環境で勝ち抜くにはどのように戦えばいいのか、それはやはり競争を勝ち抜く原動力であるイノベーションの推進に限ります。

 

いかにしてイノベーションが生まれるのかは、また別の項でお話します。


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