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ブランドへの誤解

 

市場に出回るあらゆるものがブランドと成り得る現代で、ブランドはマーケティング上の大きな課題とされています。

 

商品の特性で差別化を図っても、競合他社に商機があると判断されれば瞬く間に模倣されてしまう現代の競争環境において、ブランドという無形の差別化は模倣できない競争優位性として注目されています。

 

ブランド化が重要とは言われるものの、ブランドに対する誤解が未だに根強く残っています。

 

ブランドを誤解したままではブランド化は成し得ないため、ここではブランドに対するよくある誤解を解きたいと思います。

 

誤解1 ブランドとは高級ブランド(ブランド品)を意味する
特に欧州の高級ファッションブランドを「ブランド品」と呼ぶため、そのような誤解があると思います。例えば、ルイ・ヴィトンやエルメスなどがあります。

 

確かにこれらは「ブランド」には間違いありませんが、ブランドの一部であって本質ではありません。

 

実際には、値段の多寡はブランドに関係しません。

 

安いメーカーの商品はブランドではない、なんてことはありません(いわゆる「ブランド品」には含まれないかもしれませんが)。

 

同様に、高いメーカーの商品がブランドである、ということでもありません。

 

値段が高かろうが安かろうが商品を識別できる名称や標語、デザインなどがあればブランドとなります。

 

誤解2 ブランド=商標
商標はブランドを表示するもですが、ブランドそのものではありません。商標はトレードマークであり、ブランドとは別の意味を持ちます。

 

そして、商標はブランドを構成する要素の一つです。

 

また、ブランドを企業や商品のネーミングやロゴを意味するものという誤解もあります。

 

これらもまたブランドの要素に含まれますが、「ブランド=ネーミングである」というような、ブランドの一要素がブランドとイコールであるとしばしば誤解されます。

 

それではここで、ブランドの定義を明らかにしておきましょう。

 

個別の売り手もしくは売り手集団の商品やサービスを識別させ、競合他社の商品やサービスから差別化するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはそれらを組み合わせたもの。

 

これがアメリカ・マーケティング協会(AMA)によるブランドの定義です。

 

ご覧のとおり商品の名前や商標以外にもブランドを構成している要素があります。

 

なお、ブランドを構成している要素は以下のようなものがあります。

 

名称 商標 標語 メッセージ デザイン シンボル イメージ サウンド

 

以上のように、他社と識別できる要素全般がブランドを構成しています。

 

例えばインテルのCMで必ず流れているサウンド(「ポーン ポポポポン♪」という感じの音。ちなみに音商標として登録されています)、聞けばインテルを思い起こすことができますよね?

 

あのサウンドとインテルが結びつくことで、音でもブランドを形成することができるのです。

 

誤解3 ブランドは商品のみの話である
ブランドは商品と大きく関係していますし、商品ごとのブランドも確かに存在しております。

 

しかし、ブランドは商品以外にも、製造しているメーカーや販売している店舗にも関係しているものです。

 

例えば、トヨタ自動車は多様な製品を擁しており、それぞれがブランドを形成していますが、TOYOTA自身も一ブランドとしてみなされています。

 

このように、企業自体がブランドとなっているものをコーポレート・ブランド(企業ブランド)といいます。

 

また、小売店などの店舗がブランド化するとストア・ブランドというなど、製品以外もブランド化されます。

 

なお、製品のブランドをプロダクト・ブランド(製品ブランド)といいます。

 

例えば、トヨタ自動車は企業であるためコーポレート・ブランドに分類され、トヨタ自動車が販売しているプリウスなどの商品はプロダクト・ブランドになります。

 

誤解4 ブランドは広告などのプロモーションで作られる
この誤解は、マーケティングを広告などのプロモーション活動と勘違いしていることと同じような誤解です。

 

プロモーションで消費者にイメージを刷り込ませることによってブランドは形成される。なんていうことはありません。

 

マーケティングにおいても、ブランディングにおいても、確かにプロモーション活動は大いに活用されます。

 

しかし、実際の製品の品質が広告を見て期待した品質より劣っていたり、製品に不具合があってその対応が粗末だったりすると、ブランドに対して好ましくない、負のブランドイメージが形成されてしまいます。

 

このようなことは、プロモーション活動と別のところで起こることです。

 

ブランドは顧客と企業との信頼の証でもあるため、日々顧客に価値を提供し続けることによって形成される、信用の積み重ねだということを忘れてはいけません。

 

広告などで企業が望むイメージ作りをするだけではブランディングとは言えませんし、実際ブランドはできません。

 

顧客との持続的な関係によってブランドができ上がるため、プロモーション活動以上に経営活動が重要であり、経営活動が揺らぐとプロモーション活動が意味をなさなくなってしまいます。

 

誤解5 ブランディングの対象は顧客だけである
前述したとおり、ブランドは長期間に渡る顧客との信用の積み重ねによって形成されます。

 

そのため、ブランディングの主要な対象が顧客であることは疑いないことです。

 

しかし、企業経営の領域でも同様のことが言えるのですが、企業の関係する対象は何も顧客だけでありません。

 

企業の役割は顧客に価値を提供し、顧客から対価を受け取るという関係にありますが、企業と関係している者は顧客以外にもっと多く存在します。

 

株主、債権者、取引先、従業員など企業と利害関係を有する者(ステークホルダーと言います)、彼らを疎かにしてはなりません。

 

企業が存在するのは、顧客のためだけではなく、利害関係者、もっと広く言えば社会全体のためとも言えます。公的な存在としての企業の社会的責任が問われる現代においては、顧客だけを向いていればいいとは言えません。

 

ブランディングは企業に対するイメージが重要視されるため、企業が社会でどのような責任を果たしているかという経営方針や企業理念も大きく関わります。

 

そのため、ブランディングにおいては顧客だけでなく、利害関係者や社会を意識する必要があります。


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