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AISAS│電通版AIDMA

 

AISAS│インターネット時代におけるAIDMAモデル

消費者の購買プロセスをモデル化したものはさまざまあり、AIDMA(アイドマ)モデルはその代表例です。(AIDMAの詳細は『AIDMA|購買までの心理的プロセス』を参照ください)

 

AIDMAとは、(Attention)製品を認識し、(Interest)製品に興味を持ち、(Desire)製品を欲し、(Memory)製品を記憶し、(Action)製品を購入する、要するに、「人は買うまでにこの順番で行動するよ」ということを示したモデルです。

 

AIDMA
 1.Attention(注目)
 2.Interest(興味)
 3.Desire(欲望)
 4.Memory(記憶)
 5.Action(購買)

 

このAIDMAは1924年に米国のマーケター サミュエル・ローランド・ホールによって提唱されたものですが、他にもこの類似モデルがあります。

 

元々は1898年に米国の広告研究者セント・エルモ・ルイスが提唱したAIDAが始まりで、以降AIDAを基にして、他のマーケターがAIDCAやAIDMAなど修正モデルを提唱しました。

 

日本ではAIDMAが有名ですが、米国ではAIDA(AIDMAの「M」が無いだけで他は同じ)の方が広く用いられています。

 

そして、AIDAを源流とするAIDMAモデルの修正は、ここ日本でも行われました。

 

それが、インターネット時代におけるAIDMAモデル AISAS(アイサス)です。提唱元は広告代理店最大手の電通です。

 

従来のモデルでは、消費者の消費活動を大きく変えたインターネット上での購買行動を説明するには不足な点があるため、これを修正し、電通によって新たなモデルとしてAISASが提唱されました。

 

余談ですが、株式会社電通が平成16年に「AISAS」を「アイサス、エーサス」と呼称して商標に出願、翌年に登録されました。なお、商標登録されているからといってこの言葉を利用すること自体は商標権の侵害には当たらないのでご安心ください(商業の場では別ですが)。

 

さて、話をAISASに戻しましょう。

 

AISASはAIDMA同様、購買までの各ステップの頭文字を取ったもので、その内容は次のとおりです。

 

AISAS
 1.Attention(注目)
 2.Interest(興味)
 3.Search(検索)
 4.Action(購買)
 5.Share(情報共有)

 

AIDMAを基礎としているため、よく似たステップになっています。1、2、4がAIDMAと同様で、AIDMAと大きく違う点に購買後の行動があります。また、インターネットらしく「検索」が入っているのが特徴です。

 

AISASの各段階について順々に説明すると、まず始めの2段階はAIDMA同様に、製品に注目(Attention)し、興味(Interest)を持ちます。

 

続いて、インターネットを用いた消費活動では「検索(Search)」をかけます。GoogleやYahoo!など大手の検索エンジンでキーワードを入力して検索するのが主流です。

 

検索し、目当ての製品についての情報を収集し、買う決心がついたところで、購入(Action)に至ります。AIDMAの欲求(Desire)と記憶(Memory)の段階がインターネット上では検索に代わっています。

 

AIDMAでは購入が最後のステップですが、インターネット時代には製品を購入後にも消費者の行動は続きます。

 

インターネット時代の消費者は、製品を使ってみて、使い心地などの感想を情報共有(Share)します。

 

インターネットが普及してから、消費者行動が変わったことの一つに、SNSやブログなどで誰もが情報を発信できるようになったことがあります。

 

AIDMAは企業側からの一方的な情報発信する「マス広告」時代のモデルでした。そのため、インターネットで消費者同士が大量の情報を共有する時代について言及されておらず、適用できなくなりました。

 

AISASは、インターネットの普及によって消費者の生活が変化したため、時代に合わせて修正した消費者購買行動を説明したモデルなのです。

 

なんでこんなにあるの?│多様なモデルが生まれる背景

ちなみに、これらAIDAを源流とする消費者購買プロセスに限らないのですが、ビジネスではさまざまなモデルがあり、現在も日々新たなモデルが生み出されています。

 

それも、AIDAからさまざまなモデルが派生するように、既存のモデルを独自に修正し、新たなモデルとして提唱することも頻繁に見られます。

 

4P(Product、Price、Place、Promotion)に新たなPを加えたり、既存のPを違うPに変えたりするなどです。

 

なぜ、このようなことが起きるのでしょうか?

 

それは、新しいモデルを開発することで、自分独自の理論として売り込むことができるからです。一種のマーケティング手法です。

 

「〇〇はもう遅い! これからは□□だ!!」というように、具体的には「4Pは古い! 今の時代には5P(6P、7P…)だ!」という具合に。

 

本項の場合は「AIDMAはもう適用できない! インターネット時代にはAISASだ!」ですね。AISASに至っては商標登録までされています。

 

なお、電通がAISASを商標出願した平成16年のインターネット普及率は66%、平成26年には82.8%と普及率を伸ばしています。(総務省「平成26年通信利用動向調査」より)

 

同時に、インターネット広告費用も随分と伸びました。近年でも前年比2桁成長するほどです。

 

AISASの普及は、インターネット市場が成長途上で、いち早くそれに適用したフレームワークを開発した電通の慧眼のためでしょう。


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