セグメンテーションの軸1
セグメンテーションを行う際には、市場を細分化するための基準を設ける必要があります。
この基準を細分化の軸や切り口、セグメンテーション変数などと呼びます。
市場を地理的に細分化する以外に、顧客の属性や価値観などの変数でも細分化でき、細分化方法にもさまざまな種類があります。
マーケターはマーケティング上の問題として、市場を意味のある区分をすることが求められます。
意味のある区分とは最終的により多くの収益獲得が期待できる、ニーズを持つ集団を意味します。
以下、それぞれの変数について解説します。(変数を基準や細分化と置き換えても差し支えありません。例:地理的変数は地理的基準、地理的細分化と同義)
地理的変数(ジオグラフィック変数)
一番簡単に分けられる変数だと思います。地理的変数は文字通り、市場を地理を基準に細分化します。
例えば、地方ごとに。大きく分けると関東と関西、島ごとに分けて北海道、本州、四国、九州など。
さらには北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州といった八地方に関東を北関東、南関東、中部の一部を甲信越と細分化することも可能です。
もちろん、47都道府県や、それぞれの市区町村にも分けることもできます。
選ぶセグメントは一つでも複数でも可です。
セグメントの選定について詳しくはターゲティングの範疇ですが、複数地域に同じ事業を営んでも、異なるサービス内容を展開する戦略も可能です。
同じ企業の小売店でも販売する品目がその地域に根付いている品を提供するような場合や、宿泊業では都市部の洗練されたサービスと地方のゆったりとしたサービスを提供するといった場合などがあります。
事業は同じでもサービス内容を地域ごとにデザインすることで、複数のセグメントを攻めるという戦略が立てられます。
地方区分で分ける以外にも、気候で分けることも可能です。温暖な地域と寒冷な地域では人々の嗜好も大きく異なるでしょう。
つまり、ニーズが異なるセグメントに成り得るのです。
その他には地域特性があります。都市部や郊外、地方など人口密度で分けられたり、地域の特色が色濃い地域などがセグメンテーションの基準になります。
基本的に地域ごとにある価値観の違いに着目することでセグメンテーションできます。
例えば、都市部は鉄道網が隅々まで整備されているため、自動車を主要な移動手段と見なさない人も多くいます。しかし、地方では鉄道以外の交通網もまばらなため、自動車を主要な交通手段としています。
したがって都市部と地方では自動車に対する志向が異なることが分かります。
グローバルな展開をしている企業なら地理的変数は特に気を使います。国ごとに大きく文化等が違い、法律などの基準が異なるため、現地での事業展開は本国と大きく異なるでしょう。
人口動態変数(デモグラフィック変数)
具体的には、年齢、世帯規模、性別、職業、所得などの変数があります。
また、地理的変数にも関わりますが、宗教もや人種も人口動態変数に入ります。多くの国は宗教の自由を認めておりますが、地域と宗教は今でも密接な関係にあります。
宗教に関して言えば、イスラム教徒(ムスリム)は毎日決まった時刻にメッカの方角を向き、祈ります。
そのため、腕時計や携帯電話に常にメッカの方角を示すコンパス機能を付けることでイスラム教徒の需要を作ったという事例もあります。
イスラム教徒向けの商品なら日本で販売するよりも、イスラム教を国教とするサウジアラビア(サウジアラビアは国籍の取得に改宗を義務付けているため、サウジアラビア国民はみなイスラム教徒である)のような国で販売する方が、はるかに多くの需要が見込めるでしょう。
さて、宗教に関する話はここまでにしましょう。
人口動態変数は消費財のマーケティングではよく使われる変数です。消費者のニーズや選好は人口動態変数と結びつきが強いことがその理由に挙げられます。
実際、テレビなどの報道でも「子供に大人気の○○」、「若者の間で大流行のファッション・ブランド」などというように、人口動態変数で細分化されたセグメントを使っています。
特定の集団を括ることが容易な変数であることも一因でしょうが(マスメディアは団塊世代、ゆとり教育世代など、世代を一括りに呼称する「レッテル貼り」がお得意ですね)。
特に、同じ世代に属する人は、同じ経験を共有するため価値観も似やすい傾向にあります。そのため、年代ごとに嗜好が異なり、セグメント分けができるのです。
このとき注意しなくてはならないことが同じセグメントに属しても時系列でニーズが変化することです。
今の若者と10年前の若者ではニーズが異なるため、常に同じニーズを満たす製品を新しい世代には製造しても受け入れられないかもしれません。
人口動態変数は世代や年代で分けることが容易ですが、所得や職業でも分けられます。
ブルーカラーとホワイトカラーでは業務中の衣服が異なるため、衣料品のニーズは異なります。
ブルーカラーのメンバーに高級スーツを訴求するよりも、ホワイトカラーの地位の高い管理職や上級職(同時に所得も高いと思われる)メンバーに訴求したほうが大きな収益が期待できるでしょう。
家族構成では、独身者と4人家族ではニーズが異なります。独身者は自分の趣味にかけるお金が家族持ちと比較すると余裕があるため、消費金額が異なるでしょう。
自動車の例で言えば、4人家族の顧客に2人乗りのクーペは絶対おススメしません。クーペならむしろ独身者に向けた販売戦略を取る方が良いでしょう。
家族がいるならファミリー向けの車があります。乗車定員も4人、6人など家族構成に合わせた車種が揃えてあります。4人家族なら定員4人以上の車はセダンやワゴン、ワンボックスカーなどさまざまな種類の車が選べます。
ただ定員が適当であるならニーズを満たせるのではなく、自動車の用途によって求める志向が大きく異なります。
マーケターはそれぞれのニーズを見極め、それを満たす製品を提供することが求められます。
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