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権威性|人は権威に従う心理的性質

 

人は権威に盲従する

権威の影響力は非常に強く働きます。

 

人が行動するにはそれなりに強い動機があると考えることが自然です。

 

人を説得するにもそれなりの理由がないと説得できないと考えられます。

 

しかし、こと権威に関して言えば、人は盲目になってしまうことがあります。

 

人間社会を考えてみると、権威への服従についてよくわかります。

 

教育では、親や学校の先生に従うことが正しいと教わります。

 

成人してからは、法律や政治などの社会を律するシステムに従います。

 

権威に服従することは社会組織を円滑に動かすことに上手くはまるのです。

 

権威の影響力の強さは宗教にも多大な貢献をもたらしております。

 

例えば、旧約聖書は神という根源的な権威に従う物語といえます。

 

創世記では、神に従うアブラハムをはじめとする彼の子孫(イサク、ヤコブ、ヨセフら)は多大な祝福を与えられ、神に従わない者らはソドムとゴモラのように滅ぼされました。

 

権威に従うことの正しさと背くことの恐ろしさについて非常に多くの物語で語られています。

 

22章では神の権威に従う衝撃的な出来事があります。

 

それは、アブラハムが息子イサクを連れてモリヤという地のある山に登り、息子を捧げなさいという命令です。

 

常に正しい神が己の息子を捧げよと命じてきたのです。

 

そしてアブラハムは息子を縛り、

 

 刃物を取り、息子を屠ろうとした。 (22章10節)

 

主は彼の忠誠を試したかったため、本当にイサクの命を取ろうとはせず、御使いの制止によりイサクは助かりました。

 

創世記の中ではこの場面でのアブラハムの心理について語られていません。

 

しかし、いくらなんでも実の子供の命を捧げよという命令をすんなりと受け入れられるとは思えません。

 

彼なりの葛藤はあったと思います。

 

ですが結局は神への忠誠が勝り、イサクを捧げようとしました。

 

そして、主は彼の忠誠心に満足し、彼を多いに祝福しました。

 

つまり、権威への服従の正しさについて説いているわけです。

 

実子の命を捧げるという一見すると、非常識、非道徳的で人道に反する行為です。

 

しかし、高位の権威者の命令によって行為の正当性が裏付けられてしまうのです。

 

本人の常識からかけ離れていようと、“正しさ”は権威が担保してくれるというわけです。

 

権威の強さを明らかにした実験

人は権威に盲従することを明かした有名な実験があります。

 

ミルグラムという心理学者の実験です。

 

新聞広告の「記憶の実験」の参加者募集広告で人を集め、ある実験を行いました。

 

参加者は二人ペアを組み、一人は「生徒」、もう一人は「教師」として二人別の部屋に入り、インターホンで連絡を取りながら単語テストを行います。

 

単語を間違えると教師は生徒に電流を流し、間違えるごとに電圧が上がります。

 

生徒は間違いを重ね、次第に強くなっていく電流に激しく痛みを訴えます。

 

生徒役の参加者の容態が危険だと思いながらも、実験は続けられます。

 

生徒は必死に解放を訴えます。しかし、教師は構わず間違いを出した生徒に電流を流します。

 

最終的には気を失ってもなお無回答は誤答として、電流を流します。

 

この実験は実は、生徒役の参加者はサクラで、記憶テストで間違ったことも、電流を流され痛みを訴えることも演技でした。

 

教師役の参加者を観察していたのです。

 

結果、40人の実験参加した教師役のうち電気ショックを流すことをやめた人はほとんどいませんでした。

 

教師役の参加者は研究者にやめさせてくれと頼みはしたものの、研究者は拒否しました。そして、実験を続けたのです。

 

なぜ、生徒は痛みを訴え実験の中断を要求したのに教師はやめなかったのでしょうか?

 

教師役は道徳心が欠片もない人などではなく、普通の人です。参加者は男性も女性も同様に電流を流し続けました。なぜなのでしょう?

 

結論を言えば、研究者の権威に従って実験を続けたということです。

 

冷酷非道でもない普通の男女が、権威者の命令に従い教師役として実験を進めたのです。

 

権威の獲得法

さて、ミルグラムの実験についてはこれまでにしましょう。

 

人は権威に従うことを明らかにした実験が存在することさえ知ってもらえればいいのです。

 

この権威性ですが、実際にどうビジネスに使われているかがあなたの関心だと思います。

 

人はその道の専門家の話にすんなりと納得してしまいがちです。ゆえに、権威を持った人の話は信じてもらいやすくなります。

 

推薦者に権威のある人が選ばれるのは、権威者が認めていることが信用の裏付けになります。

 

権威あることがビジネスの説得の場で有利に働くことはわかりました。

 

では、権威を獲得する方法にはどうすればいいのでしょうか?

 

実に単純で、自分が権威あると箔付けするだけです。では、箔付けの方法をお教えします。

 

まず、資格を持っていれば一気に権威性を発揮できます。

 

その資格が広く認知されていて、高度な専門性を有すると知られている資格ほどいいです。

 

医者や弁護士になるには、非常に難易度の高い資格を取得しなければならないことはよく知られています。

 

司法試験は文系の資格で最難関ですし、医学部は入試の偏差値が最も高い学部です。

 

これら難関資格は、資格を持っただけでその人が高度な専門性を有していると証明しているようなものなので、権威性を発揮するには有効です。

 

次に、肩書きを得ることです。有名大学教授、〇〇学博士などは、特に強い権威ある肩書です。

 

人はその人をありのままに見ず、肩書を見るきらいがあるため、資格や肩書きは権威の獲得に有効です。

 

服装や装飾品といった身に付けるものも権威を引き出す材料になります。

 

ローマ教皇はカトリックの最高権威者です。儀式に赴く際は、豪奢の衣装を身にまといます。服装が権威を強調するのです。

 

ビジネスでは服装もよく見られています。

 

もし相手に軽くみられず、権威ある人と思われたいのであれば、落ち着いた伝統的な色合いのスーツで、パリっと糊の効いたワイシャツ、ブーツは革の光沢が美しく出るよう磨いておきましょう。


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