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マーケティング・コンセプトの変遷

 

マーケティングの考え方は変わっていく

 

マーケティング・コンセプトとは、マーケティングにおける基本的な考え方です。

 

ビジネスは時代と共に大きく変わっていきます。技術の進歩や競争の激化などの要因から、市場や競合関係は大きく変わっていきました。

 

マーケティングもまたビジネス同様、時代と共に現在まで変容していきました。

 

生産志向

生産志向は需要が供給を上回っていた時代のコンセプトであり、マーケティング史上最古のコンセプトです。

 

生産志向という言葉通り、生産に重きを置いた考え方で、自社の経営資源に注視しているシーズ志向であり、生産に対する経営努力が求められます。

 

顧客は低価格の製品を好むという考えを前提としており、生産コストの逓減や生産性を高めて大量の製品を生産することが、生産志向における課題です。

 

現在でも大手のメーカーでは途上国の安くて大量の労働力を利用して大量生産することで、生産コストを低く抑えて低価格で販売するという戦略を打っている企業があります。

 

製品志向

製品志向は顧客はより高品質・高性能な製品を好むという考えを前提としたコンセプトです。経営者は製品を今よりもより品質を高める、より性能を上げることを重視します。

 

しかし、製品志向には、企業が製品の質ばかり見ているため、顧客が本来必要としているモノに気が付かなくなってしまうという限界があります。

 

「良いモノを作りさえすれば売れる」という顧客のニーズを見誤る典型的な近視眼的マーケティング(マーケティング・マイオピア)です。

 

販売志向

販売志向は標準化された製品の大量生産が可能になった段階のコンセプトです。

 

まず、製品を大量に生産しその後、市場に送り出し、顧客からの評価を問うプロダクト・アウトという考え方が基となっています。

 

端的にいうと、より多くの製品をより多くの人により高く販売する理念です。

 

経営者は大量生産した商品を捌くために新たな市場の開拓や効果的なプロモーションなどの販促活動に注力することが求められます。

 

企業側から働きかけないと顧客は行動してくれないという考えで、プロモーションを積極的に行い、販売に注力することから、このコンセプトこそマーケティングだと考える人が後を絶ちません。

 

確かに積極的な販促活動は顧客が関心を示さないような財(非探索財)では特に実践されています。

 

しかし、始めに製品ありきなコンセプトであるため、市場のニーズを無視しており、自社の生産能力しか見ていないことに大きな問題点があります。

 

顧客が求めるモノを売るのではなく、売りたいモノを売るという考え方はマーケティング本来の考え方とは大きく異なります。

 

マーケティング志向

顧客志向ともいい、供給が需要を上回り、競合間の競争が激しくなった市場でのコンセプトです。

 

販売志向の「作ってから売る」プロダクトアウトに対して、顧客のニーズに合った製品を市場に送り出すマーケットインという考え方が基礎にあります。

 

このコンセプトからいよいよ企業本位な考えから脱却します。

 

今までは、開発した製品をどうお金に変えるかというプロセスでしたが、マーケティング志向では製品設計から消費までの全てのプロセスで顧客に満足してもらえる価値を提供することに努めます。

 

顧客のニーズには顕在したニーズと、潜在しているニーズがあります。

 

顕在したニーズは顧客が自分の求めているモノを表現しているニーズで、求められている製品をそのまま製造する「受動型」です。リサーチによって容易に発見できる低次なイノベーションの開発です。

 

マーケティング志向において重要な課題は潜在しているニーズです。潜在しているニーズは顧客自身も自分の本来のニーズが分かっていません。

 

現存する製品では解決できていない(満たしていない)ニーズを探索する必要のある高次なイノベーションによる開発です。

 

21世紀のマーケティング・コンセプト

マーケティング志向は1950年代に生まれており、21世紀となった現代では環境の変化から新たなマーケティングが求められています。

 

マーケティング・コンセプトは多様化しており、企業の社会的責任も声高に叫ばれている昨今では社会志向という、自社の利潤の最大化を追及するだけではなく、自社が社会に与える影響についても考慮に入れるコンセプトもが現れました。

 

収益の一部を慈善団体などの寄付に回すことコーズ・リレーデッド・マーケティングという販促手法が社会志向の一つです。

 

無闇に寄付することを表明するのではなく、顧客が購買することで社会に貢献できることを訴えることで顧客の購入を促せます。

 

一方で社会貢献を名目にして稼いでいるという批判もあるため、社会貢献と収益を上げることを上手い按配で両立させることが課題です。

 

現在では、社会志向も含めて、マーケティングは事業の全体を包括するアプローチを取る必要があります。

 

ホリスティック・マーケティングという、マーケティングを単一の活動ではなく、それぞれの活動が相互に依存しあい、マーケティングにおいては「すべてが重要」であるという認識に立っています。

 

つまり、組織の構成員全員がマーケティングに関わっているという認識を持たなければなりません。

 

例えば、企業は業務ごとに部門分けされています。

 

顧客と直接係らない業務に携わる従業員であろうとも、経理では滞りない請求書の発行は顧客に喜ばれるでしょうし、衛生管理責任者は製造現場が清潔であれば、顧客に自社製品の衛生管理は万全だとアピール(工場見学会やWebサイトでの情報発信など)できます。

 

これらの活動も立派なマーケティングです。インターナル・マーケティングといい、組織内の各部門にマーケティングへの理解を浸透させる、上記のホリスティック・マーケティングの一要素です。

 

ホリスティック・マーケティングは、マーケティング活動はもとより、顧客や流通チャネルとの関係構築、企業の社会的責任を果たしたりもします。

 

ホリスティック(holistic:全体論の)という言葉通り、全体の活動を統一する視点でマーケティングに臨むことが求められます。

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