社会的証明の原理|大勢の判断は正しい
社会的証明の原理とは
社会的証明とは、ある状況で、自分の判断より周囲の人たちの判断を頼りにしてしまうという心理原則です。
ある状況とは大別すると、「自分の判断に自信が持てないとき」と「自分と似た他者の行動に影響されたとき」に分けられます。
このような状況では、人は多数の人の判断が正しいものであると感じてしまいます。
何事も自分で判断を下すように見えても、その判断が他者の影響を受けている可能性は大いにあります。
簡単に言うと「みんなそうやっているのだから、私もそうしよう」と判断してしまいます。
社会的証明の原理のビジネスでの活用例
社会的証明の原理をビジネスの現場で活かすには「大多数がそう行動している」と伝えることがコツです。
例えば、テレビの通販番組で「お電話お待ちしております」と言う場合と、「電話が繋がらない場合は、恐れ入りますが繰り返しお電話下さい」というのでは大きく視聴者に与える影響が異なるのです。
主張内容は本質的に「視聴者に電話を促す」という両者同じ主張ですが、反応は後者の方がはるかに大きいのです。
「お電話お待ちしております」では、オペレーターがコールセンターで消費者からの電話を今か今かと待ち構えているような印象を受けますが、「電話が繋がらない場合は〜」では大勢の消費者が電話をかけてオペレーターが手一杯な印象を受けます。
後者の場合は社会的証明の原理が働き、電話を多数の人がかけているから自分もかけなくてはと思ってしまうのです。
日本漢字能力検定協会、いわゆる漢検は、かつて「250万人の漢検」というロゴを掲げていました。
これは社会的証明の原理を活用している例です。大勢の受験者がいることを明かすことで、未受験者に向けて漢検を受験する理由をより強く喚起しました。
実際に、ピーク時には280万人以上の受験者がいたことから効果があったのでしょう。
「○○人」という具体的な数字を出すことで、大勢の人が受けている(買っている)と思わせ新たな消費者を獲得できます。
コンサルティングやコーチングを生業としている方は「1000人の指導実績」など具体的な人数の実績を出す、社会的証明の原理を使った誘導テクニックを用いています。
他にも寄付や募金を募るときは、予め見せ金としてある程度のお金を箱に入れておきます。
これは「他の人が寄付しているから、あなたも寄付することが正しい」と相手に思わせて寄付を促す誘導テクニックです。
平均の引力
また、社会的証明の原理と似た法則のようなもので、「平均」には人を引き寄せる不思議な引力のような効果があります。
ウェス・シュルツという研究者はカリフォルニアの約300世帯の週のエネルギー消費量の記録をとりました。
そして、集計し平均を取り、各家庭の玄関にその家庭の消費量と平均消費量を記載したカードをかけました。
すると、数週間後の消費量は、平均を超えていた家庭の消費量は5.7%減りましたが、平均未満の消費量の家庭はなんと、8.6%も消費量が増加していました。
これは、「平均」に引き寄せられるように各家庭の消費量が変化してしまったのです。本来「省エネ」は、エネルギーの消費量が少ないという、好ましいことであるにもかかわらずこのような結果になってしまいました。
「平均」すなわち多数の行動が好ましくない行動を誘発させてしまったのです(実際は平均値が最大多数とは限りませんが)。
このように、社会的証明の原理は必ずしも「正しい」判断になるとは限らない心理原則でもあります。