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(下らなくても)理由を付けて行動させる

 

人に何かを頼む場合、理由を付け加えると承諾させやすいという性質があります。

 

しかも理由は何でもいい。なんなら、理由になっていなくてもいいのです。

 

行動はパターンに支配されている

動物には本能に備わる機械的な行動パターンがあります。ある刺激を受けると、ある決まった行動をとるという規則的なパターンを取り、これを固定的行動パターンと呼びます。

 

例えば、シチメンチョウの母鳥はひな鳥の「ピーピー」という鳴き声を聞くとひな鳥の世話を始めます。

 

仮にひな鳥が鳴かないのであれば、母鳥はひな鳥を殺してしまうケースもあるのです。

 

シチメンチョウの母鳥はひな鳥の「ピーピー」という鳴き声のみを引き金に世話を始めるのです。他の特徴には一切影響を及ぼしません。

 

シチメンチョウの天敵は毛長イタチであり、シチメンチョウはイタチを見かけるとすぐさま攻撃を仕掛けるほど強い警戒心を抱きます。

 

これはイタチの人形であっても攻撃を仕掛けることが確認されております。

 

しかし、天敵の毛長イタチですら、気を許してしまう固定的行動パターンがシチメンチョウには備わっているのです。

 

毛長イタチの人形にテープレコーダーを仕込んで、予め吹き込んだひな鳥の鳴き声を再生すると、母鳥はイタチをひな鳥だと思って自分の保護下においてしまいます。

 

外見上は明らかにイタチだというのに声のみを頼りにひな鳥だと認識してしまうのです。

 

もちろん音が止むと攻撃を開始します。

 

なんとも単純なパターンですが、動物にはこのように単一の刺激に対して単一の動作を取る本能が備わっています。

 

これをロバート・チャルディーニは「カチッ・サー」と表現し、ある刺激がテープレコーダーの再生ボタンを押し、予め吹き込まれた音を流すという固定動作の特徴をたとえました。

 

人は理由があると承諾する

固定的行動パターンは人間にも働きます。もっとも、人間以外の動物ほど確実性のある性質ではありませんが、ある刺激に対して特定の行動をとることが非常に多いことがわかっています。

 

エレン・ランガーと協同研究者たちが行った実験で、人は何か要請されたときに理由があると承諾されやすくなることが判りました。

 

コピーを取るのに並んでいる人に、「急いでいるので先にコピーをとらせてくれませんか?」と頼んだ場合、94%が先にコピーを取らせることを承諾してくれました。

 

では、何の理由も述べずに「コピーをとらせてくれませんか」と頼むと、60%の人から承諾が得られました。「急いでいる」と付け加えた場合とは明らかに承諾率に差があることが判ります。

 

ということはコピーを承諾してもらうには切迫した理由を述べることが承諾してもらう鍵なのでしょうか?この実験では第三の要請方法を試したところあるポイントが鍵だということが判ったのです。

 

第三の要請方法とは、「コピーをとらなければならないので、先にコピーを取らせてくれませんか」と頼んだのです。

 

そして、93%もの人が承諾してくれました。

 

コピー機の前に並んでいる人はみな、「コピーをとらなければならない」状況にあるため、承諾する理由になっていないにもかかわらず大勢の人から同意を得られたのです。

 

これは「〜ので」という前置き(もはや理由ではない)を付け加えることによって、人は承諾しやすくなるという性質を表しています。

 

みなさんも相手の行動を促したいとき、「〜ので」や「〜だから」といった理由を付け加えてみると良いでしょう。

 

ただし、いい加減な理由をつけて承諾率を上げることができるのは「小さなお願い」の場合のみです。

 

もっと大きな利害が絡むお願いに関しては、理由に正当さがないと承諾率はあげられません。

 

コピー機の例だと理由抜きでも60%の割合で承諾を得られるため、少ない枚数ならとりあえず一度頼んでみるのも手かもしれませんね。

 

参考文献 ロバート・B・チャルディーニ著 『影響力の武器 なぜ、人は動かされるのか』


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