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戦略的ポジショニング構築の手順

 

知覚マップを用いてポジショニングを構築する手順を解説します。

 

ポジショニングの検討方法は主に2通り。「製品コンセプトをそのままポジショニングにする」「知覚マップを作成して狙いどころのポジションを発見する」の2通りになります。

 

前者の「製品コンセプトをそのままポジショニングにする」方法は、製品コンセプトがそもそも独特な場合に適用できます。具体例として、ソニーのウォークマンを挙げました。

 

基本的にほとんどの製品・サービス自体が画期的なコンセプトに基づいているわけではないため、多くの場合は「知覚マップを作成する」アプローチでポジショニングを検討することになるでしょう。

 

消費者が市場に出回っている製品をどのような立ち位置として認識しているかを知るためのツールが知覚マップです。

 

知覚マップを用いてのポジショニングは、競合他社が攻めていない市場や特徴を発見することを目的としています。

 

ポジショニングはいわゆる「差別化」のプロセスです。

 

マーケティングとは「差別化」を図ることだと考える人もいるくらい「差別化」とは重要なのです。

 

なぜ重要かというと、差別化を成せば競合と価格競争を避けられ、大きく利益を得られるからです。基本的に価格競争に陥ることは経営戦略上、悪手とされています。

 

それでは、戦略的ポジショニング構築のステップを解説します。

 

手順1.ポジショニングの軸となる特徴を洗い出す

まずは、製品の特徴を網羅的にリストアップすることから始まります。

 

製品機能にこだわり過ぎる必要もありません。デジタルカメラであれば「画素数」「重量」「○○機能」など性能をそのまま表す軸が考えられますが、これらは他社との差が難しいです。

 

機能そのものではなく、製品に対するイメージ、機能から得られる便益でも構わないのです。

 

先のカメラなら「表情を判別する機能」は「笑顔(ベストショット)を逃さない」というポジションも取れます。

 

コーヒーであるなら「香り」やカフェインによ「目覚めに効く」などあります。コーヒーの「目覚めに効く」という特徴から、「朝に飲む」飲料として今では親しまれてます。さすがに現在では朝用のコーヒーも飽和してきていますが。

 

問題は顧客ニーズを満たすことだけでなく、競合と同じポジションに立たないことです。

 

業界内では当然のことでも他社より先んじることで新たなポジションを獲得できます。例えば、石鹸のポジショニングを「体臭を消す」として大ヒットしたライフブイ石鹸があります。

 

もちろん、普通の石鹸は体臭を消すことができるため、消臭効果はライフブイに限りません。

 

しかし、当たり前のことだが誰も取っていないポジショニングをすることで、消費者に新しい価値を提供できました。

 

消費者の感じる価値とは伝え方で変わる好例です。

 

製品機能に捉われない、顧客視点やニーズといったさまざまな視点で軸を網羅することで有効なポジショニングを得る可能性が高まります。

 

手順2.軸を2つに絞り込む

購買決定要因、すなわち製品属性を絞り込みます。

 

手順1でリストアップした多くの特徴の中で、購買決定要因となる軸を2つまでに絞り込むことで、知覚マップの作成に移れます。

 

2軸を決定すれば、自社と競合各社の特徴をマッピングしてポジションが確定します。このため、事実上、ポジショニングの最後の手順となります。

 

実際には、新たな軸の発見などにより、手順1に戻って繰り返し絞り込むことになるので、手順1、2を繰り返し、ポジションを練ることになります。

 

さて、この手順2についてですが、軸を絞り込むには3つのことに注意しながら行います。

 

1.競合より魅力があると認識してもらう
魅力的だと思われるには2通りあります。「新しいポジションを確立する」ことと「競合のポジションを弱める」ことです。

 

新しいポジションを確立する方法は、全く新しい製品を提供する以外にも、先のライフブイの石鹸のように顧客に新たな価値を提供するこで得られます。

 

競合のポジションを弱めるとは、他社の強みが活かせない市場で戦うことを意味します。

 

同じポジションで戦うことができるのはリーダーと呼ばれる市場のトップ企業くらいです。そのため、普通は競合と同じポジションを取ることを避けます。

 

競合より魅力的だと思われるということは、競合と相対的に評価されることを意味します。そのため、常に競合の動向に目を光らせることが大事だと言われるのです。

 

2.模倣されにくいポジションをとる
基本的に戦略とは“競争回避”の戦略です。

 

他社から模倣されて、市場をかっさられる例はよくあります。

 

ペプシ・コーラは「ダイエット・ペプシ」を販売し、コーラのカロリーを気にする客層を取り込みましたが、コカ・コーラが「ダイエット・コーク」を販売したことでシェアをあっけなく奪われました。

 

競合がいないポジションを取ることも重要ですが、競合が入ってこないポジションを取れれば尚良いです。

 

3.共食いを避ける
カニバライゼーション、あるいはカニバリゼーションともいわれ、自社製品間で市場を奪い合う状況を指します。

 

ポジショニングは競合との優位性を持ち、なおかつ自社製品(またはブランド)が取っていないポジションを取ることが必要です。

 

例えば、あるコーヒーブランドには通常のコーヒー、無糖(ブラック)、微糖、カフェオレなど味のラインアップは揃っていた場合に、同じブランド名で微糖のコーヒーを新たに発売すると現行の微糖と顧客を奪い合ってしまいます。

 

この場合、新たなブランドを作り、そのブランド名を付けた微糖のコーヒーを販売することが通常です。

 

ポジショニングは修正が効く

他のマーケティング・プロセス同様、ポジショニングも修正が効きます。

 

いったんポジショニングを決めても競合他社が、同じポジショニングで競争をしかけてきた場合、自社が取れるのはそのままのポジションか、新たなポジションを取るかの2通りです。

 

競合が自社より強いと判断したのであれば、同様のポジションのままではシェアを奪われてしまうでしょう。その場合は、また手順1から始めて新たなポジショニングを確立しましょう。

 

また、一度打ち出したポジションがそもそも顧客ニーズを満たしていなかったり、満たしていると評価されていない場合も同様に手順1に戻りましょう。

 

戦略の失敗は戦術で取り返すことは非常に困難です。そのため、戦略の最終プロセスであるポジショニングは一際重要です。


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