製品の差別化で競争優位性を獲得する
差別化とは、競合他社と自社との相対的に有利な差異を生み出すことです。
他の製品と何ら代わり映えしない製品は売れません。もし競合製品と何も差異を生み出せずに販売するのなら、それはもう完全に運に任せるようなものです。
ポジショニングでは、競合が取れない戦略上有利なポジションを取ることが望ましいことを述べました。
これは同じ土俵で戦っても顧客からは競合との差異が知覚できないため、自社が独自の価値を提供できることを顧客に知覚させて競合との差異を作る方法です。
ポジショニングは企業の立ち位置で競合との差別化を図ります。
しかし、肝心の提供物が他と同じに見られてしまっては、せっかくのポジショニングも台無しになってしまいます。
製品は企業が顧客に価値を与える提供物です。製品で優れた差別化をすると競争に非常に有利に働きます。
そのため、マーケターは製品でどのような差別化が採れるか日々模索します。
ここでは、製品戦略で差別化が実現できる3つのパターンを紹介します。
1.製品による差別化
T:形態
大きさや形状、構造など形態を変えることで差別化が可能です。
小型化や容量の増大などによって差異を作ることができます。
U:特徴
製品の基本的性能に自社独自の特徴を付加させます。
iPhoneは基本的には携帯電話ですから、通話機能があれば製品の基本的特徴を備えていることになります。
自社独自のOS、iOSを搭載することで、直感的に操作できる特徴的なインターフェースを実現しました。
V:品質
品質は製品の差別化に大きな影響を与えます。顧客が製品の良さを表す場合にも「品質の良さ」という言葉がよく使われていることからもわかります。
品質には性能品質と適合品質の2種類があります。
性能品質とは、製品の性能水準の高さです。一般に品質が高いとは性能品質が高いことを意味します。
また、性能品質は概ね低い、普通、高い、最高級の4段階に分けられます。
自社製品が今、顧客の頭の中でどの段階にいるのかを把握すれば、品質でどう差別化できているのか把握できます。
品質は高いことが望ましいことは確かですが、誰もが最高級品質を目指す必要はありません。
品質の高さはコストの高さに繋がり、必然的に価格の高さにも繋がります。
問題は価格に対する価値の提供であるため、低品質でも低価格なら満足する顧客もいるため、品質と価格のバランスが重要なのです。
適合品質とは製品がカタログの仕様通りの性能を発揮できるかどうかの水準です。
もし、企業が発表した仕様通りの性能が発揮されなかった場合、顧客は企業に裏切られたと感じ、失望します。
企業は市場に流通させる製品が全て仕様通りの性能が発揮できるよう努めなければなりません。
とはいえ、現実には一部不良品が混ざることがあるため、その後の対応もマーケティング上重要であり、事前に備えなければなりません(保証、サービスによる差別化)。
W:耐久性、修理可能性
耐久性とはどれだけの期間製品を通常通り使えるかという水準です。
ある種の製品は耐久性が非常に重視されます。自動車や家電製品など、いわゆる買回品は特に耐久性が比較され、長持ちする製品にお金をかけることもあります。
また、製品が誤作動や破損、故障など通常通りの使用が不可能になった場合、修理できるか否かも重要です。
修理のしやすさを修理可能性といい、修理可能性の高い製品を消費者は好みます。
修理ができても多額の修理費用や多くの時間を取られることは消費者から好まれません。
可能であるなら、ユーザが自力で容易に修理できることが望ましいです。
そのため、仕様書や製品のHPに修理のマニュアルやユーザから寄せられる「よくある質問(FAQ)」を充実させることで修理可能性を高めることで差別化が可能です。
2.デザインによる差別化
競争が激しくなってくるにあたり、製品そのものではなく、デザインで差別化を図ろうとする動きが増えました。
技術が高度になったと同時に、最新技術があっという間に模倣され陳腐化するため製品の性能などでは差別化できなくなりました。
そこで、企業は容易に模倣できないデザイン性で差異を生み出し活路を開こうとします。
ただし、製品デザインで優位性を勝ち取る企業もあれば、デザインで損をしている企業もあるため、非常に難しい課題でもあります。
3.サービスによる差別化
T:注文の容易さ
注文完了まで複雑であると、顧客は途中で挫折してしまうかもしれませんし、購入に対する熱意が冷めてしまうかもしれません。
注文完了までのプロセスが多い、入力する事項が多いなど顧客の時間を奪うかのような工程に、顧客はうんざりさせられます。
逆に注文が容易であると、顧客は再度同じサービスを利用します。
通販サイトを運営しているのなら、一度住所氏名などの顧客情報を入力すれば2度目からは顧客情報の入力は省略する、ほんの数回のクリックで注文をすませるといった工夫が凝らせます。
U:配達
流通網の発達により、製品・サービスを顧客の手元に直接届けることができるようになりました。
今日では製品を顧客の元に迅速かつ正確に届けることができる配達が求められます。
配達サービスは今日、さまざまな場面で活用されています。
家電量販店では、重い電化製品を持ち運べない顧客のために配達サービスがあります。
食事のデリバリーも配達サービスです。
ちなみに、フェデラル・エクスプレスは「翌日配達」というポジショニングで一気に規模を拡大しました。
配達だけでも十分な差別化が図れた事例の一つです(もちろん企業のマーケティング努力やサービスの向上も忘れてはいけません)。
V:アフターサービス
購買活動は製品を売って終わりではありません。
実際に顧客が利用しなければ製品の意味をなしません。
そして、実際に利用しようとしたものの使い方がわからない、取り付け方がわからないといった問題が浮かび上がることがありません。
そのため、製品販売後も顧客をフォローするためのサービスを充実することで、安心して製品を買ってもらえることができます。
アフターサービスの例では、製品の取り付け、顧客の教育・トレーニング(効果的な使い方の講習など)、修理、保証などがあります。
大量仕入れによる低価格のメリットがある大型家電量販店への対抗として、町の小さな電器店は充実したアフターサービスで差別化を図る例があります。