標的セグメントの要件
セグメントの要件
セグメンテーションではマーケティング上、意味のないセグメントというのが存在します。
マーケターはセグメンテーションでは、マーケティング上意味のある――マーケティング戦略が実行できる――セグメントを抽出する必要があります。このプロセスこそがターゲティングです。
本項では、マーケティング上意味のあるセグメントの要件を解説します。
1.到達可能性
細分化された市場に到達できなければ、マーケティング上そのセグメントは無意味です。
あるセグメントが地理的に遠いことや、セグメント内のメンバーのリストが入手できないとき、そのセグメントは到達可能性を持っていないということになります。
インターネットの普及により通信網が全国に張り巡らされた現在でも、顧客へのアクセスができないことはあります。
その例としてセグメンテーションで絞り過ぎることです。
さまざまな変数を組み合わせることで、より深いニーズを絞り込むことができます。
「“30代”の“サラリーマン”で“毎週2回”、“お昼”に“ラーメン”を食べる人」というセグメントを絞り込んだとして、このような人のリストが存在しなければ意味がありません。
行き過ぎた細分化はリストを既存のリストから手に入れることは難しいですが、集客の観点では情報発信を続けると、絞り込んだニーズに“ドハマり”する場合があります。
ダイエットという市場で考えると、体の特定の部位のみ痩せたいと願う人や、ダイエットの期間が短い方が良い、食事は制限したくないなどさまざまな願望が存在します。
絞りに絞って「“二の腕”を、“週一回”のエクササイズで、“好きな食事をしながら”、“1カ月間”で2cm細くするダイエットメソッド」というサービスを開発したとします。
このメソッドをブログやサイトで発信し続けると「“”」で括ったワードで検索を掛けてきたユーザが集まって来ます。
すると、そこでメールアドレスを入手するフォームを作成すれば、セグメントの顧客リストが手に入ります。
長い目で見れば到達可能性は克服できます。しかし、セグメンテーション時には到達手段はないため、そのセグメントを選択するかどうかは戦略と折り合いをつける必要があります。
2.測定可能性
細分化された市場は、市場の規模や購買力を測定できる。
3.維持可能性
細分化された市場は、市場規模が事業を行ううえで、十分な利益を得られる。また、事業を持続的に成長させることができる。
企業は持続的成長を常に目指します。市場規模を測定した結果、十分な旨味がないと判断すれば、進出する意味がありません。
4.差別化可能性
細分化された市場は、他の市場と異なるニーズを持つなど区別できる。
ある商品が30代男性と40代男性から同様の反応を得た場合、この両者は別々のセグメントに分けられません。
同じ反応を取る、すなわち同様のニーズを持ったなら両者は同じセグメントに属することになります。
5.実行可能性
細分化された市場市場、その市場を惹きつけるマーケティング戦略を実行できる。
セグメンテーションしても、狙いのセグメントに訴求できるプロモーションが出来ない場合はそのセグメントはマーケティング上、有用なセグメントにはなりません。
これらの5項目がセグメントの要件です。ターゲティングの際は、セグメントがこれらの可能性を満たしているかを確認しましょう。
セグメンテーションとニッチ
これまで、セグメンテーションについて数々の解説をしてきました。セグメンテーションとは簡潔に言えば「より具体的なニーズを持つ市場を発見すること」と言えます。
細分化とは絞り込むことであり、絞り込むほど具体的になります。
狭い市場を攻めることをよく「ニッチ」と言います。市場を細分化するセグメンテーションとニッチはよく似ているようですね。
そこで、セグメンテーションと良く似た概念であるニッチについて解説します。
ニッチとはセグメントをより狭く捉えた市場です。ニッチ内の顧客は非常に具体的なベネフィットを求めます。
先の例であった、「“二の腕”を、“週一回”のエクササイズで、“好きな食事をしながら”、“1カ月間”で2cm細くするダイエットメソッド」はまさにニッチであると言えます。
ニッチは規模が小さいが、そのベネフィットを満たしたくれる企業は他にいないため、顧客から強い選好が得られます。
通常のサービスでは満足できない顧客はニッチにはプレミアムを支払っても良いと考え、競合の少なさも併せて、強い収益力を持ちます。
ニッチのセグメントは収益を上げられる程度には大きく、競合が参入して来るには小さい市場規模です。
特定の顧客に優れた価値を提供し、ニッチ内では抜群の影響力を持ちます。ニーズの多様化によって生まれた“隙間”のような市場です。