プロモーション(Promotion)
プロモーション(コミュニケーション)
Promotionはマーケティングの4P最後のPです(実際は4Pの順番は厳密に決められていわけではありません)。
これまでの4Pでは、Productで価値を生み出して製品としてパッケージングし、Priceで価値に見合う価格を設定し、Placeで効果的で効率のよい流通チャネルを整備してきました。
ここまで「3P」を通じて、顧客との価値の交換をする土台作りができました。この3Pさえ整えれば最終消費者の手に製品を届けることはできます。
しかし、消費者が製品の存在を知らない、どんな問題を解決できるかわからない、どこで買えるのかもわからないという状況であれば購入されることはありません。
そこで、最後のPであるPromotionの出番です。Promotionの役割は「価値の伝達」です。
消費者が製品を手にとってはじめて、マーケティング活動の成果が得られます。そこで、Promotionによって企業が提供する価値を消費者に伝えることで、消費者を購買に導きます。
企業が提供する製品の存在を知らなければ顧客は購入しませんし、また製品の情報が伝わったタイミングが不適切な場合も購入されません。
このようなときに無理に押し付けて販売したとしても顧客満足を得ることはありません。
ターゲットの顧客に対し、最適な価値を最適なタイミングで伝達することがPromotion、すなわちプロモーション戦略の要です。
プロモーションは一般に販促と訳されますが、プロモーション戦略は消費者に価値を伝える役割を持つため、コミュニケーション戦略とも呼ばれます。
マーケティングでは、消費者と企業の双方向のコミュニケーションが重要です。
したがって、情報を企業側から一方的に押し付けるような発信がプロモーションの役割ではありません。
ただ製品の存在や特徴を知らせるために情報を発信すれば良いとは考えません。
プロモーションは大量の広告を一方的に垂れ流すような情報発信ではなく、消費者との相互のやりとり(コミュニケーション)なのです。
コミュニケーションにおいて、情報の内容「何を」と同じくらい「誰が、いつ、どのように」情報を伝えるかが大事です。
「誰が、いつ、どのように」とは、それぞれ情報の発信者、発信者が情報を受け取るタイミング、伝達方法にあたります。
また、コミュニケーションの意義は情報発信そのものではなく、情報のやりとりによって顧客と良好な関係が築けることにあります。
コミュニケーションを通して、消費者は自社のブランドに対するイメージを確立します。
これらのことから、4PのPromotionをプロモーション戦略と訳さず、コミュニケーション戦略と訳す場合もあります。
プロモーション戦略――メッセージの選択とメディアの選択
どんなに優れた製品・サービスの開発に成功しても、製品・サービスを流通させても、これらの情報が消費者に伝わっていなければ意味を成しません。
製品を作った、店舗に置いた、後は買ってもらうだけ、という状況まで持って行ったら買い手は黙って買ってくれる。そんな都合が良いはずありません。
製品の存在、その製品が顧客のニーズを満たせること(ベネフィット)、どこで販売しているかなどの情報を、適切なターゲットに伝えることで購買に導くことができるのです。
単に製品の機能や性能を漫然と発信するのではなく、企業が顧客にもたらす価値を戦略的にメッセージとして発信します。
プロモーションもマーケティング戦略の一要素であるため、プロモーションの展開は戦略的に設計される必要があります。
そして、プロモーション戦略では主に、メッセージの選択とそのメッセージをどのメディアで発信するかを選択します。
メッセージの発信において、「誰が、何を、いつ、どのように」を決定することが重要です。
「誰が」は基本的に企業です。マーケティング理論は消費財メーカーのマーケティングを取り扱っているため、自ずとメーカーのプロモーションについて論じられます。
しかし、マーケティングは本質的に業種を問わないため、小売業などさまざまな業種の企業もメッセージの発信者になりえます。
個人単位でブランディングが重要視されている現在は、「誰が」発信するかで情報の価値や注目度が大きく変わるため、「誰が」は見過ごせない要素になりつつあります。
「いつ」とは、情報を伝えるタイミングです。
タイミングを逃してプロモーションが失敗する場合もあり、逆にタイミングが良かったおかげで大成功する場合もあるため「いつ」も軽んじることはできません。
「何を、どのように」が注目されがちなため、「誰が、いつ」は頭の片隅に追いやられがちですが忘れてはいけません。
「何を」はメッセージの内容です。
プロモーションのメッセージで「何を」語るかを決定します。
例えば、製品・サービスそのもの(名称や機能、便益)であったり、自社がこの製品にどんな思いを込めているのか理念であったり、どんな消費者のために製品があるのか、など「何を」にはさまざまな内容が含まれています。
顧客に訴求力があり、競合に対して優位性を持っていることを示せるようなメッセージを検討します。
メッセージの主眼と成る例は、
1.製品自体の特徴
・名称
・属性(仕様、機能、材質、成分、品質など)
・ベネフィット
・イメージ
2.製品と顧客との関係
・製品の利用シーン
・製品のターゲットとしている顧客の属性
3.製品を提供ている企業
・企業の有する技術
・理念や歴史
4.製品が有する競合優位性
・強み、優位性、差別化した点
などがあります。
最後に「どのように」の決定は、どのようなメディアを活用するか決定します。
メッセージを伝えるにしてもさまざまなメディアを使うことができます。プロモーションの効果を高めるメディアの組み合わせをプロモーション・ミックスと呼びます。
プロモーション・ミックスでは、数あるメディアの中から最適なメディアの組み合わせを決定します。
まとめると、プロモーション戦略は顧客との良好な関係を築くためのコミュニケーション活動です。
その活動はメッセージの発信から始まります。
「誰が」「いつ(タイミング)」「何を(内容)」から成るメッセージ、「どのように」すなわちどんなメディアで発信するのか、これらの要素を戦略的に決定するプロセスがPromotionです。