製品ライフサイクル|各段階のマーケティング上の特徴と対応
製品ライフサイクルのおさらい
製品の中には、導入から間もなく市場から姿を消すものもあれば、人間の寿命よりも長く市場に存在し続けるものもあります。
コカ・コーラは1886年に発売されてから、現在までに世界中で愛されています。一種類の清涼飲料水を100年以上販売し続けるという偉業を成しています。
その反対に、人知れず市場から姿を消す新製品も存在します。多くは、普及する前に姿を消すため、ほとんどの人の記憶に残っていません。
製品は市場に導入されてから、消費者の需要を獲得し、利益を生み成長しながら存続します。そして、やがては衰退し、市場から撤退します。
このサイクルが製品ライフサイクルです。
製品ライフサイクルは基本的に、S字の曲線を描きますが、製品ごとに各段階(導入期から衰退期までの4段階)の長さなどが異なるため、製品ごとに異なる曲線を描きます。
一時のブームによって成長した製品は、ブームが過ぎればあっという間に衰退する場合もあります。
各段階のマーケティング上の対応
ここまで、製品ライフサイクルについてお話してきました。ここからは、サイクルの各段階においてどのような対応をとれば良いのか、マーケティングの観点からライフサイクルについて解説します。
1.導入期
導入期はまだ製品の存在をほとんどの消費者が知りません。そんな中得体の知れない品物を購入しようと考える人はまれです。
そのため、大規模なプロモーションで大々的に一気に大衆に売り込むのではなく、製品の認知度を高めるようプロモーションしながら、革新を好む消費者を対象に販売しましょう。
消費者の多くは保守的で、実際に価値があると他の消費者たちから認められてから購入に至ります。その反対に革新を好む消費者も少数ながら存在します。
そのため、導入期のターゲットは革新者で、マーケティングの重点目標は製品の認知度向上が一般的です。
2.成長期
導入期に、製品がジワジワと売れ始め市場認知度も高まると、製品への需要が高まり市場規模が広がります。
そして、一気に製品への需要が高まるのが成長期です。
成長期になると急速に競合が参入して来るため、競争が過熱します。
多くの競合製品と自社製品を区別するため、差別化を図り、ブランド化をすることが課題です。
成長期にどれだけシェアを勝ち取れるかで、成熟期以降の業績に大きく関わるため、より多くの市場シェアを獲得することがマーケティング上の重点的な目標です。
市場シェア目標を達成するには、製品の価値や特徴による差別化、ブランドによる差別化、ライン拡張によるセグメントごとのニーズを満たすなどの方策があります。
導入期は製品自体の啓蒙が課題で、成長期は製品が他と違うことを消費者に啓蒙することが課題です。
3.成熟期
経済は富を「パイ」に例え、パイの取り分を最大化することが経済主体(ビジネスでは企業)の目的であるとされています。
製品の導入は新たなパイの創造であり、成長はパイの総量の増加です。そして、成熟期に入るとパイの総量が上限に達します。
そのため、成熟期では今あるパイからどれだけ多く切り取れるかの競争になります。
成熟期で多くのパイを獲得するには、成長期の内にどれだけ市場シェアを得ているかによります。
成熟期になると競争はあるものの、ある程度構造が固まってしまうため、現状のシェアを維持するよう、製品やサービスの品質の改良に努めることが良策です。
最大シェアを持つリーダー企業は製品ラインを拡充し、あらゆるニーズに対応できるよう取り揃える、小規模な企業は独自の強みを活かせるセグメントで生き残りを図るなど企業ごとの特徴が多様になる時期です。
4.衰退期
市場規模が減少する時期です。
市場シェアの高い企業は現状のままでも、追加投資が必要ないため利益を得られますが、それ以外は撤退を余儀なくされます。
また、リーダーであっても、いずれ市場の縮小により製品廃止となってしまいます。
衰退期で取る戦略は、低い売上でも利益が確保できるよう生産性を高めることや、新しい価値を創出しサイクルの延命を図ることです。
イノベーションによる価値創造は新製品の開発以外にも、製品の新たな提案や製品の改良修正、ポジショニングの修正などによっても可能です。