価格は目的に応じて設定する
目的によって価格が決定する
価格戦略は製品にどのような価格を設定して販売するのかを決定するプロセスです。
価格設定法はさまざまあるのですが、設定方法が複数ある理由は、目的よって決定する価格が異なるからです。
新製品の価格設定では、ペネトレーション・プライスとスキミング・プライスという2種類の価格戦略があります。
この2つは目的が異なるため、設定する価格が異なるのです。目的の違いが導入期の価格が低価格か高価格かの違いとして現れます。
価格設定、プライシングとは結局のところ金額の大小を決定することです。つまり、高く売るか、安く売るか、あるいはその間を取るかに過ぎません。
企業が取る価格帯を大雑把に分けると、低価格帯、中価格帯、高価格帯に分けられます。
また、安いか高いかは金額の絶対値ではなく、業界によって相対的に決まります。
300円のスナック菓子は高いのか、300万円の自動車は安いのか、同業界の競合他社や自社製品ラインと比較しなければ判断できません。
300円の菓子と300万円の車、金額の上では車が圧倒的に高いですが、競合しないため普通両者は比較対象にはなりません。
菓子が比較すべき対象はコンビニやスーパーなどのその菓子と同じ棚にある菓子です。製品にもよりますが比較すると300円は案外高いかもしれません。
300万円の車の場合、周囲の車の価格が100〜200万円であるなら、この車は一際高く見えてしまうでしょう。逆に他の車が500〜700万円であるなら安く思われるでしょう。
外食産業では、牛丼チェーンは低価格戦略の最たる例です。反対に高級ホテルに店を構えるレストランなどは高級路線なため自ずと高価格戦略となります。
価格設定の目的
新製品の価格戦略では、ペネトレーション・プライス戦略は市場シェアの早期獲得が目的です。
そして、シェア目標の実現のために低価格で販売し、より多くの消費者に手に取ってもらえるようにしました。
このようなことから、製品にかける目的によって価格が決定するとも言えます。
目的には以下の種類があります。
1.最大利益
企業の目的は利益の最大化であるため、価格戦略において利益を重視するのは当然のことです。
利益の最大化を図る価格戦略では、需要の価格弾力性をリサーチし、価格が需要にどれだけ影響を与えるか把握しておきましょう。
そして、利益が最大化される価格を算出し、販売します。
注意点として、リサーチで予測した需要が実際の需要と乖離する場合があります。
2.最大シェア
最大多数の市場シェアを獲得すると、後の競争に有利に働きます。
市場シェアが最大の企業はマーケット・リーダーといい、リーダーには価格支配力があるため、価格競争に応じなくても競争に勝つことができます。
最大シェアを獲得するときの価格設定が低価格戦略です。新製品のペネトレーション・プライス戦略と同じです。
低価格によって大量の需要を獲得し、シェアの最大化を図ります。
低価格によって需要を喚起できる市場では有効です。
また、大量生産によってコスト・ダウンが図れます。
3.上澄み吸収
スキミング・プライス戦略と同義です。
高価格でも需要が見込める製品を他社に先駆けて販売して、新製品を早期に導入する消費者(上澄み)から投資の回収を目的とします。
高価格戦略なため高い価格でも需要が見込める市場であること、少量生産でもコスト高にならないことなどが成功に繋がります。
新製品が模倣されにくく、他社が参入しにくいほど上澄みを多く吸収できます。いわゆる参入障壁が高いことが望ましいです。
4.製品品質の維持
価格は品質のバロメーターです。高価格路線の製品に対しては特にバロメーターとしての機能が強調されます。
「安かろう悪かろう」「高いモノは良いモノ」という観念が消費者にはあるため、製品品質(のイメージ)を維持するためにも価格を高く保ちます。
既存ブランドから新製品を発売する場合はブランドのイメージに則した価格を設定します。
5.生き残り
売上不振にあえぐ企業は価格設定に生き残りをかけます。
短期的には低価格で販売し、何とか売上を確保しようと試みる企業も存在します。
しかし、あくまで短期的な価格設定なため、持続的な事業のためにも長期的には適正な(事業の目的に応じた)価格で販売を行います。