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デ・マーケティング|売らないマーケティング

 

マーケティングの反対、デ・マーケティング

デ・マーケティング(demarketing)とは端的に言うと、「売らないマーケティング」です。

 

デ(de)という接頭辞は否定や反対を意味します。

 

例えば、デフレーション(deflation)は「吹く」を意味するflateに、反対のdeを付けたdeflateの名詞形です。デフレーションの意味は経済でも使われる「デフレ」、すなわち収縮です。

 

したがってマーケティングにデをつけると、需要を促進させるマーケティング活動の否定なため、需要を抑制するマーケティングを意味します。

 

基本的に大量に販売できることが望ましいと考えられる中で、あえて「需要を減らす」マーケティングとは変わった考えだと思われます。

 

そもそもマーケティングはアメリカの大量生産大量販売の時代、マーケティング・コンセプトでいう生産志向に端を発します。

 

そのため、現在までほぼ一貫してマーケティングとは突き詰めると需要の拡大を求めるプロセスであり続けています。

 

しかし、過剰な生産を背景とする現在、いつまでも供給の受け皿となる需要は拡大し続けるわけではありません。

 

したがって、必要以上に需要を喚起せずに、限定した顧客を対象に顧客満足を実現しようという考えがデ・マーケティングです。

 

デ・マーケティングの考え方は供給能力と企業の長期目標に見合った需要をコントロールすることです。

 

デ・マーケティングの具体例

具体的なデ・マーケティングの方策はさまざまあります。

 

環境保護や健康増進といった社会や倫理的な責任を企業は持ちます。

 

例えば、喫煙は健康を害するといった禁煙のキャンペーンは明らかにタバコを販売するためのマーケティングではありません。すなわち、デ・マーケティングです。

 

遊園地やテーマパークなどは人気がありすぎるとアトラクションにが超長蛇の列になってしまい、顧客に不満を抱かせてしまいます。

 

目先の利益を追い求めるためなら、入場料を稼ぐために入れるだけ入場させることも可能です。

 

しかし、来園した顧客を満足させるために入場規制をし、来園者がアトラクションを楽しむのに適正な入場者数を保つために入場規制を行います。

 

高級レストランでは上品で静かな雰囲気を保つために、小さな子供の来店を断るなどしています。

 

なぜ、こうした売上を減らすような施策をするのかというと、顧客満足が実現できると、リピートにより中長期的に多くの利益をもたらすのです。

 

このように将来的な需要のために、目先の需要を調節する役目も持ちます。

 

大勢の顧客に詰めかけてもらい、儲かれば良いといった販売主義は、顧客との結びつきを自ら絶っているようなものです。

 

販売志向の発想では、企業は「なるべく多くの製品を販売すること」という考えに囚われています。

 

例えば、「値引き」は販促にしばしば用いられる方法です。

 

価格を下げれば販売量は確かに増えるかもしれません。しかし、その製品は値引きして良い製品なのでしょうか?

 

高級ブランドであるなら、高級イメージを損なうため、値引きというのは賢い方法ではありません。

 

お得意様は「安売り」を嫌っている、「高いことに意義がある」と価値を感じているかもしれません。

 

したがって、安易に販売量を増やすため、値引きをしてしまうことは今までの顧客、それも上客やお得意様を裏切ってしまう行為になります。

 

値上げや高価格は需要を減らすことになりますが、ブランド・イメージの向上により利益を増やすことにもなります。

 

70年代にはコトラーは供給量を過少に見せかけ、需要を喚起するマーケティング手法を提唱していました。

 

デ・マーケティングとはただ販売しないだけのマーケティングではなく、必ず中長期的な視点に基づいて行われています。

 

供給を減らすことが後の需要の増加に繋がるのです。

 

行列のできる飲食店などは供給量を調整して、わざと行列をつくり人気店を演出する方法や、製品を人気がありすぎて売り切れのため販売中止し、在庫に余裕が持てるようになったら販売再開するという方法もデ・マーケティングの一つです。

 

これらの手法は心理学の希少性や社会的証明を活用したプロモーションでもあります。

 

デ・マーケティングについてもっと詳しくお知りたい方はこちら『デ・マーケティングの理論的背景』もご覧ください。


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