マーケティングとセールスの違い
この項では、マーケティングとセールスの違いについてお話しします。
かねてより、マーケティングとセールスというのは混同して認識されがちだと思っております。
マーケティングの役割は端的に表すと「売れる仕組みづくり」であり、セールスの役割は「商品を売ること」です。
どちらも最終的には、商品を販売して利益を得ることに行き着くため、両者の活動の違いについてハッキリと認識していないのだと思われます。
それでは、この2つの活動がどのようなものなのか、どう違うのか、早速明確にしていきましょう。
マーケティングはセールス以前より始まっている
マーケティングとセールスは、モノを売る方法がマーケティングとされることもあり、どちらも売ることに帰結するため混同されがちですが、両者の活動は大きく異ります。
最終段階として、商品の販売というのは共通しており、重なる部分があるからこそ区別がつきにくいのだと思うのですが、実際はセールスはマーケティングの一部の活動に過ぎません。
企業の活動においてマーケティングはセールスより前の段階から始まっています。
すなわち、セールスはマーケティングの幅広い活動の中で、氷山の一角なのです。
セールスは製品ありきの活動です。
先に製品が存在し、それをどう顧客に販売するかを考える活動がセールスです。
それに対し、どのような顧客を相手に、どのような価値を与えるか意思決定することから、顧客と取引し、関係を維持し続けることまでがマーケティングの扱う範疇です。
セールスは製品が出来上がってから役割を果たしますが、マーケティングは製品が製造される前から着手する活動であるため、両者は大きく異ることが分かると思います。
マーケティングの4Pを確認すれば分かりますが、プロモーション・ミックスの中には人的販売という手法があり、セールスマンによる販売活動が含まれています。
このことから、マーケティングの一部にセールスがあることが理解できるでしょう。
当サイトで幾度と紹介していると思いますが、ピーター・ドラッカーの言葉に「マーケティングの狙いは販売(セリング)を不要にすること」というのがあります。
優れたマーケティングは販売すなわち、セールスを不要にすることを意味します。
ドラッカーもまた、マーケティングとセールスは別物だとしていることがよくわかります。
セールスはセールスマンの役割。では、マーケティングは?
セールスを行うのは、セールスマン(営業、販売員)です。
既に製品が製造されており、セールスマンは製品を顧客に販売します。
見込み客にアポイントメントをとり、訪問し、プレゼンテーションによる価値の提案、成約、そして最後にフォローまでがセールスマンの仕事の範囲です。
セールスマンはセールスを専門とした職業であり、セールスはセールスマンに一任されています。
ではこれに対して、マーケティングはどうでしょうか?
マーケティングの専門家をマーケターと呼びますが、マーケティングはマーケターに一任されており、マーケティングに携わる人間はマーケターのみなのかというと、答えはもちろん否です。
確かにマーケターはマーケティングを職務としていますが、マーケティングはマーケターのみ、あるいはマーケティング部門のみに任せてはいけません。
マーケティングは本質的に、顧客価値を生み出す活動であるため、一つの部門だけに任せず、組織が一丸となって果たすべきものです。
そして、企業は顧客に価値を与える組織であるため、全員が顧客に向き合う必要があります。
研究開発部門は顧客の抱える問題を解決する方法について日々研究しますし、製造部門は絶えず品質向上、コスト低減、不良品減を目指し、営業部門は顧客に最良の価値を提案します。
そのため、部門にマーケティングとつかない部門であろうとも、マーケティングに無関係とはなりません。
組織を構成している一人ひとりがマーケティングの役割を担っているのです。
したがって、役割の面で見ると、セールスはセールスマンのみが担いますが、マーケティングはマーケターだけでなく、全員が担うべき役割です。
なお、集客と販売をマーケティングとセールスとしていることがしばしば見受けられます。
書き手はあまり意識していないのかもしれませんが、マーケティングは集客だけにとどまらないことを、ここまで読んだ方は理解していると思います。
そのため、文脈から判断して書き手はどういう意図を持ってマーケティングという言葉を使っているのか注意してください。