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コーラ戦争で見るマーケティングの成功と失敗

 

比較広告

あなたはコーラ戦争というものをご存じですか? 80から90年代アメリカで、コーラ会社が比較広告という宣伝手法を使い宣伝合戦が過熱になった大きな事件です。

 

比較広告とは他社と比較して自社の優位性を示す宣伝方法です。

 

自社製品のCMに他社製品を出して他社製品を貶めるような広告もあり、例えばアメリカではゲームギア(セガ)のCMにゲームボーイ(任天堂)を出していました。

 

ゲームボーイをプレイしている少年がカラーの画面で遊びたいため、自分の頭を叩いて色付きの靄がかった視界の中でゲームをします。

 

そして、ゲームギアならカラーの画面でプレイできるというCMです。つまり、ゲームギアなら頭を叩く必要はなくカラー画面でプレイできるということです。

 

このようにアメリカでは割りと直接的に他社と比較する広告が出回ります。コーラ戦争もこのような比較広告の一つです。

 

コーラ戦争――ペプシの成功とコカ・コーラの失敗

さて、本題のコーラ戦争ですが、コカ・コーラとペプシというアメリカ二大コーラの宣伝合戦です。

 

たかだか清涼飲料水企業2社の広告上の戦いではありますが、全米を巻き込む大きな事件となりました。

 

宣伝合戦ではマイケル・ジャクソンやマドンナ(ペプシ側)、エルトン・ジョンやホイットニー・ヒューストン(コカ・コーラ側)など超有名アーティストまで引っ張ってくるほどで、一時はペプシが市場シェア首位を獲得するという大事件になりました。

 

Wikipediaに記事ができたり、世界の各種大きな出来事を並べた歌、ビリー・ジョエルの「ハートにファイア」にも出てくるくらい大きな出来事です。

 

では、ここでペプシが首位を勝ち取るまでのマーケティング戦術を見てましょう。

 

ペプシは長年コカ・コーラに先んじられており、常に2番手という認識でした。どうにかして、コカ・コーラから首位の座を奪いたいと思っていたのでしょう。

 

そこで、1975年にペプシは「ペプシチャレンジ」という企画を行います。

 

街頭でペプシ・コーラとコカ・コーラを、どのコーラか中身を教えずに飲み比べてもらったところペプシの方が美味しいという人の方が多かったのです。

 

ここからコーラ戦争は次第に熱を帯びます。

 

ペプシはコカ・コーラと比較したポジショニング戦略を取ったのです。

 

「ペプシはコカ・コーラより美味しい」を発端に、ペプシチャレンジの試飲テストの様子をそのままTVCMで放映するなど比較広告を始めました。

 

そした、コカ・コーラは古いと言わんばかりにペプシは「最先端」「革新的」というメッセージで印象付け若い世代の支持を得ます。

 

そしてペプシは勢いを増し、マイケル・ジャクソンをTVCMに起用しました。

 

ペプシに負けじと、コカ・コーラはペプシより美味しいコーラ「ニュー・コーク」を発表しました。

 

巨額の費用を投じテストを行った所、従来のコーラよりも美味しいという反応が多く、絶対ペプシに負けないコーラとして販売しました。

 

しかし、ニュー・コークは消費者から反対の抗議デモを起こされるほど市場から反発を食らう大失敗でした。

 

そして、ペプシの成功とコカ・コーラの失敗によって、なんと長年不動の首位だったコカ・コーラがペプシに首位を譲り渡してしまったのです。

 

コーラ戦争はペプシに勝利をもたらしました。

 

しかし、3ヶ月後コカ・コーラは元の味に戻し「クラシック」として販売し、首位の地位を奪還しました。

 

以上が、コーラ戦争の顛末です。

 

マーケティングで見るコーラ戦争

さて、コーラ戦争で両社がとって行動を、マーケティングの観点からどのようなことがわかるのか見てみましょう。

 

まず、ペプシの成功です。ペプシは飲み比べによって「コカ・コーラより美味しい」ということを強調しました。

 

そして、「革新的」や「最先端を行く」といったコカ・コーラのポジショニングを弱めようという比較広告を打ちました。

 

こうしたプロモーションに加え、超大物アーティストを起用したTVCMが功を奏したことが成功の要因です。

 

ペプシはマーケティングの4Pでいうところのプロモーション(Promotion)を積極的に攻めて行きました。

 

製品(Product)や価格(Price)というのは一度決まってしまえば、中々変え難い要素であるためプロモーションに積極的に取り組んだことが有効でした。

 

反対にコカ・コーラ社は製品を替え、新製品に「ニュー・コーク」を販売しました。

 

しかし、こちらは市場から「No!」を叩きつけられた大失敗。

 

市場調査ではニュー・コークの方が美味しいと評価されたのに、何がいけなかったのでしょう。

 

コトラーはこの失敗を次のように説明しています。

 

コカ・コーラの新製品はコカ・コーラの強みを自分で潰してしまったということです。

 

コカ・コーラの強みは1886年から続く伝統の味であるにも関わらず、新たな味で伝統の味を消し去ってしまったのです。

 

ニュー・コークの発表によって強みである従来のコーラを撤退させてしまったことが失敗の原因でした。

 

結果として、元に戻すことで首位に返り咲いたことから、コカ・コーラは製品戦略で余計なことをしてしまったのです。

 

余談ですが、人には損失を回避しようとする心理的な働きがあります。

 

したがって、ニュー・コーク反対のデモなどの反発は従来のコーラを味わう機会を失ってしまうことを回避するための行動だということが説明がつきます。

 

例え新製品が既存製品より美味しかろうと、親しんできた従来の味を失いたくないということです。

 

要点をまとめるとコーラ戦争は、ペプシはポジショニングと相手のポジショニングを弱めるプロモーションの成功、コカ・コーラは自分の強みを捨ててしまった製品戦略の失敗によって、一時的にペプシが首位を勝ち取りました。


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